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第215回つくば病理談話会演題

395) 豚胎子のトキソプラズマ原虫を伴う心筋炎[豚のToxoplasma gondii による流産]

  • 提出者(所属): 山口 遼作(JA全農家畜衛生研究所 クリニックセンター)
  • 動物種: 豚
  • 品種: LWD種
  • 性別: 不明
  • 胎齢: 不明
  • 死・殺の別:流産胎子
  • 解剖日:5月20日
  • 解剖場所:JA全農家畜衛生研究所

発生状況および臨床所見

九州地方の母豚250頭規模一貫経営の農場において、4月12日~15日に母豚の40%で食滞・熱発(40~41°C)、妊娠後期の母豚2腹で流産を認めた。その後、流産が15腹に拡大し雄豚1頭が斃死した。さらに妊娠母豚および雄豚が3~4頭/日斃死し、肉豚は3カ月齢の斃死が続発した。斃死は約3週間で終息し、母豚の飼料摂取量や活力は回復したが、その後も散発的に流産が発生した。
提出症例は、5月19日に流産した胎子で、病性鑑定を行った2例のうちの1例である。

病原検査

病性鑑定に供した胎子2例の肝臓、脾臓、腎臓、肺、大脳について、Toxoplasma gondii 18S-rDNAに対するNested PCR検査を行った結果、全ての臓器が陽性であった。脾臓と肺を材料として得た増幅産物292bpについて、シークエンス解析により塩基配列を決定した。各検体の配列は全て一致し、相同性検索を行ったところ既報のT. gondii 18S-rDNA領域の配列(KX008033)と100%一致した。主要臓器プール材料について、Salmonella Typhimurium、S. Choleraesuis、Erysipelothrix rhusiopathiaeLeptospira spp.、豚サーコウイルス2型、PRRSウイルス、インフルエンザウイルスA型、豚パルボウイルス、日本脳炎ウイルス、ゲタウイルス、オーエスキー病ウイルスのPCR検査を行ったが、いずれも陰性であった。

剖検所見

特筆所見なし。

組織所見(提出標本: 心臓)

提出標本では、心筋線維間においてび漫性に好中球およびリンパ球の浸潤を認め、心筋細胞の変性ならびに筋貪食像を頻見し、心筋細胞の巣状壊死を散見した。炎症細胞浸潤の認められる部位において、トキソプラズマ原虫のターミナルコロニー様構造を観察した。心外膜においてび漫性に、心内膜において局所的に好中球およびリンパ球の浸潤を認めた。ウサギT. gondii抗血清(CMC Cell Marque Corporation)を用いた免疫組織化学的検査(IHC)では、トキソプラズマ原虫のターミナルコロニー様構造に一致して、陽性反応を多数認めた。
提出症例のその他臓器の所見としては、大脳実質におけるグリア結節の散見、腸管漿膜面における軽度リンパ球浸潤、肺の小葉間および気管支周囲結合組織における軽度リンパ球浸潤、腎臓間質におけるリンパ球浸潤を認めた。ウサギT. gondii抗血清を用いた全身臓器におけるIHCでは、腎臓、肺、膵臓、大脳、小脳において虫体に一致する陽性反応を認めた。

討議

  • 同様の症例のご経験。他の原虫症との鑑別について。

診断

  • 組織診断: 豚胎子のトキソプラズマ原虫を伴う心筋炎
  • 疾病診断: 豚のToxoplasma gondii による流産

404) 銅の過剰蓄積を伴う肝細胞の孤在性壊死と胆汁栓形成[羊の銅中毒を疑う]

  • 提出者(所属): 原田 奈美香(群馬県家畜衛生研究所)
  • 動物種: 羊
  • 品種: コリデール種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 6~7歳
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日:2017年12月20日
  • 解剖場所:群馬県家畜衛生研究所

発生状況および臨床所見

羊8頭、山羊25頭、ポニー数頭を飼養している農場において、3~4歳で導入した羊が2017年11月中旬に食欲低下を呈した後、起立不能となった。治療をするも回復が見込まれず、12月20日に病性鑑定を実施した。

病原検査

細菌学的検査では、心臓、腎臓から大腸菌が分離された。

血液・生化学的検査

血液検査では、白血球数:19,500個/μL、ヘモグロビン:4.2 g/dL、赤血球数:246×104個/μL、Ht:10.6%。血液生化学的検査では、TP:7.6 g/dL、 BUN:>140.0 mg/dL、グルコース:97 mg/dL、総コレステロール:125 mg/dL、GOT:597 U/L、γ-GTP:357 IU/L、T-Bil:9.2 mg/dL、CK:>2000 U/L、クレアチニン:16.6 mg/dL、LDH:>900 U/L、Ca:12.7 mg/dL、Mg:6.2 mg/dL、IP:8.7 mg/dL。肝臓、腎臓の銅濃度は測定依頼中。

剖検所見

皮下、腹腔内脂肪組織は黄疸を呈していた。肝臓は黄橙色を呈し、硬度を増していた。腎臓は赤黒色を呈し腫大しており、割面で針尖大の黒色点および灰白色点が多発していた。膀胱には暗茶黒色の尿が貯留していた。

組織所見(提出標本: 肝臓・肝門リンパ節)

肝臓では肝細胞索の不整がみられ、肝細胞における変性、壊死が散見された。毛細胆管は黄褐色の胆汁色素で充満し、拡張していた。小葉間結合組織にはマクロファージと単核円形細胞の軽度な浸潤がみられた。腎臓では、ボーマン腔と尿細管腔に血液が貯留し、尿細管上皮細胞に大小多数の空胞がみられ、赤色顆粒を有している箇所もあった。肝門および腎リンパ節の髄洞にマクロファージの重度な浸潤がみられた。肝臓、腎臓、肝門および腎リンパ節についてルベアン酸染色を実施したところ、変性した肝細胞、一部の尿細管上皮細胞および各臓器でみられたマクロファージの細胞質内に黒緑色色素の沈着がみられた。

討議

本症例ではリンパ節において銅色素の沈着とマクロファージによる貪食像が重度にみられましたが、肝臓に過剰蓄積した銅が血液中・リンパ液中を循環しリンパ節で処理されたと考えてよいか、ご教授下さい。

診断

  • 組織診断: 銅の過剰蓄積を伴う肝細胞の孤在性壊死と胆汁栓形成
  • 疾病診断: 羊の銅中毒を疑う

405) 豚の壊死性糸球体腎炎、肉芽腫性リンパ節炎[原因不明]

  • 提出者(所属): 戸﨑 香織(栃木県県央家畜保健衛生所)
  • 動物種: 豚(ミニブタ)
  • 品種: 不明
  • 性別: 雌
  • 年齢: 1歳
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日:2016年8月29日
  • 解剖場所:栃木県県北家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

動物展示施設で飼育されているミニブタが、2016年7月16日から元気消失、発熱(41°C)を呈し、翌日から抗菌剤投与により治療するも改善しなかった。7月20日からは隔離飼育し、飼育員が強制給餌していた。同年8月29日、予後不良により鑑定殺を実施した。同居豚に異状は認められなかった。

病原検査

細菌学的検査において主要臓器から有意な菌は検出されず、ウイルス学的検査においてもウイルス分離はされなかった。また、オーエスキー病ウイルス抗体陰性、悪性カタル熱に対するPCR検査で特異遺伝子は検出されなかった。

剖検所見

肝臓および脾臓の漿膜面に線維素が析出し、腹壁と癒着していた。腎臓は両側性に点状出血がみられた。心臓と心膜および肺胸膜と胸壁の癒着がみられた。浅頸および内腸骨リンパ節の腫大、舌の潰瘍痕、喉頭蓋の充血、結腸漿膜面の出血がみられた。

組織所見(提出標本: 腎臓および内腸骨リンパ節)

腎臓では、分節性、びまん性に糸球体内に好酸性物質の貯留ならびに多数の変性した好中球やマクロファージおよび多核巨細胞の浸潤が認められた。尿細管上皮の変性や硝子滴変性も散見された。尿細管腔内には硝子円柱や蛋白尿の貯留を認め、一部炎症細胞や赤血球を容れていた。皮質間質にはリンパ球を主体とする細胞浸潤巣が散在していた。内腸骨リンパ節では、リンパ球の重度減少とうっ血が認められ、リンパ洞および傍皮質に多核巨細胞、類上皮細胞および好中球が重度浸潤し、血管内にも認められた。同様の病変は、その他のリンパ節(空腸、浅頸、鼠径)でも観察された。
その他、肝臓では、軽度の多核巨細胞浸潤を伴う微小壊死巣が散在していた。脾臓では、中心動脈内に炎症細胞退廃物が充満し、重度のリンパ球減少が認められた。心臓では、心室に散在性巣状の心筋壊死および炎症細胞浸潤が認められた。舌および喉頭蓋では重度の細菌塊を伴う壊死性化膿性炎と潰瘍形成が認められた。結腸では、出血と漿膜炎が認められた。血管炎が脾臓、腸間膜および結腸漿膜で観察され、程度は様々であった。
肝臓、脾臓、腎臓、扁桃および各リンパ節における家兎抗豚サーコウイルス2型血清(動衛研)を用いた免疫組織学的検査では、陽性抗原は認められなかった。

討議

腎臓およびリンパ節の病変からPCV2の関与を疑いましたが、確定には至りませんでした。同様の経験や知見がありましたらご教授下さい。また、これらの病理発生機序についてご討議願います。

診断

  • 組織診断: 豚の壊死性糸球体腎炎、肉芽腫性リンパ節炎
  • 疾病診断: 原因不明

406) 牛の頸動脈における石灰沈着[牛の主要血管における石灰沈着症]

  • 提出者(所属): 川島 大樹(長野県松本家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: ホルスタイン種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 4歳
  • 死・殺の別:斃死(死後約3時間)
  • 解剖日:2017年10月12日
  • 解剖場所:長野県松本家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

乳用牛56頭を飼養する農場で2017年9月12日に担当獣医師から血液生化学検査依頼のあった個体が、削痩、起立困難、食欲廃絶および心音の異常を呈し10月12日に斃死したため病性鑑定を実施した。当該農場の牛では削痩、起立困難や蹄病を患う牛がみられ、と畜牛に心内膜石灰沈着等により部分廃棄となった牛がいたことが判明した。また、当該農場ではサプリメントを数種類飼料に添加し、一日あたり養分要求量の約36倍である260,000 IUのビタミンDを毎日給与していた。

病原検査

細菌学検査では、主要臓器から有意な菌は分離されなかった。

血清生化学的検査

同居牛16頭および当該農場から今年検査依頼のあった牛3頭の25(OH)D3をELISAにより測定したところ172.7±45.8 ng/mL(同時に検査した健康牛11頭:23.7±19.4 ng/mL)と高値を示した。

剖検所見

外貌は削痩し眼球が落ち込んでおり、両側の坐骨付近に掌大の褥瘡がみられた。心臓は全体的に肥大し、特に右心が顕著に肥大していた。大動脈内面は粗造で皺状に隆起しており、同様の病変が頸動脈、頸静脈、大静脈等にみられた。その他に第一胃から直腸にかけて未消化のペレット状および顆粒状の飼料がみられた。

組織所見(提出標本: 頸動脈)

提出標本はプランク・リュクロ処方脱灰液およびキレート剤処方脱灰液を用いて二晩4°Cで低温脱灰後、5%硫酸ナトリウムで一晩中和処理を実施した。頸動脈では中膜に巣状または弾性線維に沿って結晶状の石灰沈着がみられ、動脈壁が内腔へ隆起していた。頸動脈の別の部位を切り出した標本では石灰沈着部位の周辺に軽度のマクロファージ浸潤が認められた。石灰沈着は大動脈、大静脈、頸静脈、心臓筋層内の動脈、肺気管支軟骨、脾柱、腎臓遠位尿細管、乳腺動脈、第一胃筋層の結合組織においてもみられた。その他に、心臓では心外膜の水腫、肺では肺胞腔内に漿液の充満がみられた。

討議

牛の経口投与によるビタミンD中毒の発生限界は一日あたり養分要求量の10,000倍以上とされている。今回の症例では約36倍と発生限界よりは低量ではあるが、長期間給与したことにより慢性的なビタミンD過剰状態となり、石灰沈着症を発症したと考えられた。同様の事例の経験があれば発生状況や病変の分布についてご教授いただきたい。

診断

  • 組織診断: 牛の頸動脈における石灰沈着
  • 疾病診断: 牛の主要血管における石灰沈着症
法人番号 7050005005207