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第218回つくば病理談話会演題

410) 線維乳頭腫を疑う[牛白血病発症牛の第一胃内に見られた線維乳頭腫]

  • 提出者(所属): 藤森 英雄(東京都家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: ホルスタイン種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 3歳
  • 死・殺の別:鑑定殺
  • 解剖日:2017年11月27日
  • 解剖場所:東京都家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

搾乳牛25頭、肉用繁殖牛10頭を飼養する農場で2017年9月に正常分娩した乳牛が同年11月上旬より右眼球の突出が見られ、11月14日に直腸検査をしたところピンポン玉大の腫瘤が多数触知された。
11月21日に起立困難となり、11月27日に家保にて解剖実施。

病原検査

血液、臓器のBLV遺伝子検査陽性。細菌学的検査未実施

血液生化学所見

BLV抗体陽性
血液検査結果(11/27採血):Ht28.1%、赤血球数526万個/ul、白血球数48,600個/ulうち、リンパ球数23,500個/ul(48.4%)、顆粒球数20,800個/ul(42.8%)
生化学検査:LDH(5倍希釈):7,345 IU/L

剖検所見

浅頸、腋窩リンパ節(いずれも右)は拳大、右乳房リンパ節は小児頭大に腫大し、割面は白、暗赤色で髄様を呈していた。右眼球後極に乳白色の脆弱な腫瘤が認められた。心耳、横隔膜、第一胃の漿膜面には2cm大の膨隆が複数認められ、子宮、直腸、腸間膜、骨盤腔内にも1cm~拳大の腫瘤が複数認められた。肝臓表面に褪色部があり、実質内にも及んでいた。脾腫はなかった。第一胃内の食道溝部に表面平滑、乳白色で直径5mm~2cm大の大小様々な腫瘤がブドウの房状となって確認され、全体の大きさは、小児拳大だった。

組織所見(提出標本: 第一胃)

腫瘤は粘膜下織から有茎性に腔内に伸びていた。腫瘤凸部では表面角質層の角化亢進や変性、有棘細胞の過形成は認められないが、腫瘤基部付近では角化亢進及び有棘細胞の過形成、水腫性変性が認められ、不規則な乳頭間隆起の形成が認められた。腫瘤内部では紡錘形の淡明な核を持つ細胞が束状に走行し、複雑に走行する部位も見られた。核及び細胞体の大小不同も見られ、血管の増生を伴う部分もあった。アザン染色により腫瘤内部には豊富な膠原線維が認められた。鍍銀染色では好銀性の細網線維が少量認められた。腫瘤の上皮が陥入した腔内には、胃内容物が貯留していた。

討議

消化管の腫瘤が剖検時に確認された事例ですが、他県での状況はいかがでしょうか。

診断

  • 組織診断: 線維乳頭腫を疑う
  • 疾病診断: 牛白血病発症牛の第一胃内に見られた線維乳頭腫

412) 十二指腸からClostridium perfringens A型菌が分離された牛の出血性壊死性結腸炎[十二指腸からClostridium perfringens A型菌が分離された牛の出血性壊死性結腸炎]

  • 提出者(所属): 金森 健太 (静岡県中部家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: 黒毛和種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 約10ヶ月齢
  • 死・殺の別:斃死
  • 解剖日:2018年4月6日
  • 解剖場所:静岡県西部家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

100頭規模の黒毛和種肥育農家において、2018年3月16日に北海道から導入した黒毛和種8頭のうち2頭が、同年4月3日に血便を呈した。サルファ剤を投与したところ、2頭のうち1頭は回復したが、もう1頭は回復せず、その後も継続して血便を呈し、同年4月6日に神経症状(痙攣)を呈した後、斃死した。提出症例は6日に斃死した個体である。

病原検索

細菌学的検査では、主要臓器及び体表リンパ節から有意菌は検出されなかった。十二指腸、小腸上部及び下部内容物を卵黄加CW培地で37°C、24時間嫌気培養したところ、十二指腸からClostridium perfringens(C.p)が30個/g検出された。分離されたC.pについて、毒素型別遺伝子検査を実施したところ、α型毒素が検出された。

剖検所見

外貌に著変は認められず、肛門から出血が確認された。剖検所見として、心臓に点状出血、第四胃、十二指腸及び空回腸粘膜に軽度の出血、盲腸、結腸及び直腸粘膜の出血、肥厚、血様内容物の貯留が確認された。

組織所見(提出標本: 結腸)

結腸では、粘膜上皮細胞は壊死、脱落し、粘膜固有層に炎症細胞の浸潤を伴わない壊死と著しい出血がみられた。粘膜下織及び輪筋層は水腫性に肥厚し、平滑筋線維は変性、壊死していた。粘膜固有層、粘膜表層の滲出物には多数の大型桿菌が認められ、グラム染色により菌体はグラム陽性を示した。同様の病変は盲腸と直腸にも認められた。抗Clostridium spウサギ抗体(VIROSTAT INC)を用いた免疫組織化学的検査では盲腸、結腸、直腸に認められたグラム陽性桿菌の一部と一致して陽性反応が認められた。また、コクシジウムのオーシストが直腸にわずかに認められ、その他の腸管では確認されなかった。十二指腸、空腸、回腸に著変は確認されなかった。腸管以外では、心外膜、線条体及び小脳の出血、第四胃腺腔内に石灰沈着が認められた。

討議

本症例はC.pのA型菌が出血性壊死性炎を起こしたものと考えられますが、小腸には病変が形成されずに、大腸にのみ認められました。病変が大腸に限局していた原因や、同様症例の経験についてご教示ください。

診断

  • 組織診断: 十二指腸からClostridium perfringens A型菌が分離された牛の出血性壊死性結腸炎
  • 疾病診断: 十二指腸からClostridium perfringens A型菌が分離された牛の出血性壊死性結腸炎

413) 豚の出血を伴うび漫性肝細胞巣状壊死[原因不明]

  • 提出者(所属): 山本 英子(神奈川県県央家畜保健衛生所)
  • 動物種: 豚
  • 品種: 雑種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 12日齢
  • 死・殺の別:斃死
  • 解剖場所:神奈川県県央家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

2018年2月1日、繁殖豚9頭を飼養する農場において、哺乳豚3頭が死亡した。死亡したのは1月20日に娩出された15頭のうちの3頭で、出生後、同腹の哺乳豚では死亡が続いており、2月1日に3頭が死亡したため農場主から検診依頼があった。当該農場では、飼育担当者が変更になり、豚房の保温状態が良くなかった。3頭のうち病性鑑定を実施したのは2頭で、提出症例はこのうちの1頭。3頭及び同腹の哺乳豚は1月28日から黄色下痢を認め、病性鑑定を実施した2頭ともに臀部を中心に体表に黄色の汚れがみられた。当該農場では、2016年3月に豚サーコウイルス関連疾病の発生があった。

病原検索

細菌学的検査で、回腸内容物からEscherichia coliが分離され、毒素及び定着因子についてPCR法を用いて遺伝子検索を実施したところ、特異遺伝子は検出されなかった。脳、肺、肝臓、腎臓、心嚢水、腹水から有意な細菌は分離されなかった。ウイルス検査で、脳、肺、肝臓を用いて、PCR法によりPRRSV遺伝子及びPCV2遺伝子の検索を実施したところ、特異遺伝子は検出されなかった。

剖検所見

肝臓では、辺縁部を中心に針頭大の黄白色点が多数みられた。腎臓は腫大し暗赤色を呈し、被膜が実質と強固に癒着しており、粟粒大の白斑が多数みられた。心嚢には黄色透明の心嚢水が、腹腔には赤褐色混濁の腹水の貯留が軽度にみられた。

組織所見(提出標本: 肝臓)

肝臓では肝細胞の大小様々な巣状壊死がび漫性にみられた。壊死部では出血を伴い、好中球やマクロファージなど炎症細胞の浸潤がみられた。また類洞においても好中球やマクロファージの浸潤がみられた。ベルリン青染色を実施したところ、壊死部周囲に青色に染まる顆粒を貪食する細胞が確認された。腎臓では被膜下及び被膜下皮質表層において出血がみられた。肝臓、心臓、肺、脾臓、腎臓、脾臓、扁桃、リンパ節について、抗PCV2家兎血清(動衛研)を用いて免疫組織化学的検査を実施したところ、陽性抗原は確認されなかった。

討議

肝細胞壊死についてPCV2の関与を疑いましたが、肝臓でPCR陰性、免染でも抗原を確認できませんでした。考えられる原因についてご意見いただきたいです。

診断

  • 組織診断: 豚の出血を伴うび漫性肝細胞巣状壊死
  • 疾病診断: 原因不明