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第272回鶏病事例検討会 講演要旨

  • 開催日時: 平成26年3月14日(金曜日) 13時00分~
  • 場所: 農林水産技術会議事務局 筑波事務所本館2階、農林ホール
       茨城県つくば市観音台2-1-9(交通案内)
  • プランナー:真瀬 昌司(農研機構 動物衛生研究所)
  • 司会者: 大谷 芳子(茨城県県北家畜保健衛生所)

テーマ: 大腸菌症とワクチン

1. 大腸菌点眼不活化ワクチン

矢口 和彦(株式会社 微生物化学研究所)

はじめに、鶏大腸菌症は肉用鶏に多発し、敗血症及び蜂窩識炎(滲出性深層性皮膚炎)等の病型に分類される経済的被害が大きな疾病である。しかし、原因菌(大腸菌)の血清型の多様性や病性の複雑さから、鶏大腸菌症は予防が困難な伝染病として全国的に問題となっている。そこで肉用鶏にも適用可能なワクチンの開発を試みた。今回、以下の項目について概要を報告する。
1野外調査 2ワクチン開発の経緯及びワクチンデザイン 3室内試験成績(安全性に関する試験) 4有効性に関する試験(抗体応答) 5室内試験成績(発症軽減効果) 6野外使用成績 点眼投与を用法とする本ワクチン(鶏大腸菌症(O78型全菌体破砕処理)(脂質アジュバント加)不活化ワクチン)は、平成18年に製造承認が認可され主にブロイラー農場で使用されている。今後は野外における鶏大腸菌症の更なる軽減を目指すと共に、ワクチン効果の評価方法の充実として細胞性免疫の検討・解析にも力を注いでゆきたい。

2.管内ブロイラー農場で発生した鶏大腸菌症

秋元 穣(福島県いわき家畜保健衛生所)

肉用鶏約44,000羽を3鶏舎で飼養する農場の1鶏舎(2号鶏舎)で、平成25年6月初旬から元気消失、下痢、脚弱等の症状を呈し死亡する羽数が増加し病性鑑定を実施(5羽)。さらに別鶏舎(3号鶏舎)で死亡羽数が増加、再度病性鑑定を実施(5羽)。剖検では、腹部皮下にチーズ様物の滲出等が見られ、細菌検査で7羽の主要臓器から多剤耐性の家禽病原性大腸菌(O78)を分離、鶏大腸菌症と診断。3号鶏舎では大腸菌に加えウイルス検査で脾臓等から伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)の特異遺伝子を検出。F嚢リンパ球消失を認め、IBD抗体免疫組織化学染色で5羽すべて陽性。死亡羽数の増加に関与したものと推測。

3. 採卵鶏農場に発生した大腸菌症

津山 栄一(大阪府家畜保健衛生所) 大塚 宏美(大阪府環境農林水産部動物愛護畜産課)

平成23年5月、管内の一採卵鶏農場(飼養羽数7500羽)において、死亡羽数の増加、下痢、呼吸器症状等を示したため、病性鑑定を実施。剖検所見では、腹膜の肥厚、癒着、卵墜、肝の白点、脾および腎の腫大を確認。組織所見では、線維素性化膿性漿膜炎、腹膜炎等を、また全羽で喉頭気管の粘膜肥厚、上皮の変性が認められた。病原学的検査では鶏伝染性気管支炎ウイルスのPCR検査が発症鶏で陰性だったが、同居鶏で陽性となった。また、諸臓器より大腸菌O2が、1羽からはO125も分離された。以上より本症例を大腸菌症と診断した。全羽に喉頭気管の病変が確認された事から、大腸菌に易感染性となる何らかのストレスがあったと推察された。

4. 輸入幼雛から分離された鶏大腸菌症由来E.coliの分子疫学的解析

吉田 英二(農林水産省動物検疫所)

鶏大腸菌症は国内外の養鶏産業に最も大きな経済的損失を与えている疾病の一つである。今回、国内コマーシャル鶏作出のために輸入される種鶏又は原種鶏用幼雛で発生した鶏大腸菌症由来株について分子疫学的解析を実施し、国内の鶏大腸菌症由来株について解析した報告と比較した。材料は2011年から2013年の輸入検疫時に分離した9ロット22株で、O群血清型別、病原性関連因子検出PCR、MLST型別、薬剤感受性試験を実施した。その結果、供試株のO群血清型、MLST型は多様であり、病原性関連因子はiss、iucD を高率に保有、薬剤感受性はABPC、CEZ、TC、NAに耐性を示す株が多かった。供試株のうち3株は国内の発症鶏から分離報告のあるO78;ST117に型別されたが、様々な大腸菌株が種鶏又は原種鶏群に浸潤していることが示唆された。

5.山形県内における鶏大腸菌症由来の β ラクタマーゼ(BL)産生性大腸菌の解析

木口 陽介(山形県置賜家畜保健衛生所)

ブロイラーの大腸菌症由来株の病原性に関する特徴およびβラクタマーゼ産生性と分子疫学的性状を解析することを目的として県内で分離した26株について調査を実施した。分離株の性状は26株中 O2:H (ST95,B2)4株,O25:H4(ST131,B2)4株であり、最も割合が高かった。BL遺伝子の陽性率は58%(15/26)であり、遺伝子型はblaCMY-29株,blaTEM-17株,blaCTX-M-151株,blaCTX-M-22株,blaSHV-2 1株認めた。病原性関連遺伝子保有状況はBL遺伝子保有株では、本遺伝子非保有株と比較してiss,iucD,papCの病原性関連遺伝子の陽性率が有意に高く(p <0.05)、その他5遺伝子(astA,irp2,tsh,vat,cva/cvi)でも高い傾向であった。

6. 鶏大腸菌症生ワクチンの野外応用事例

永野 哲司(一般財団法人日本生物科学研究所)

鶏病原性大腸菌の国内分離株を弱毒化した鶏大腸菌症生ワクチンは、噴霧あるいは散霧投与することで大 腸菌症を予防する効果を鶏に付与することができる。このワクチンによって惹起される免疫は粘膜免疫であり、生菌に由来した多様な抗原物質による免疫刺激を含め強固で質の高い免疫誘導が期待されている。
2013年夏の販売開始後約半年以上が経過し、これまでにブロイラー農場30箇所以上、レイヤー農場3箇所及び種鶏農場2箇所、のべ約110万羽以上の鶏に本ワクチンが投与された。それらのうち、成績が得られ出したブロイラー農場では、既に期待された効果が発揮されている。本ワクチンを今後さらに有効的に活用するために、それらの幾つかを野外応用事例として紹介する。