イベント・セミナー詳細

第279回鶏病事例検討会 講演要旨

  • 開催日時: 平成28年3月18日(金曜日) 13時00分~
  • 場所: 農林水産技術会議事務局 筑波産学連携支援センター本館2階、農林ホール
       茨城県つくば市観音台2-1-9(交通案内)
  • プランナー:谷村 信彦(農研機構 動物衛生研究所)
  • 司会者: 大谷 芳子(茨城県県北家畜保健衛生所)

テーマ: 感染症事例

1. ワクチン接種鶏に認められたマレック病の発生事例

平野 慎二(佐賀県西部家畜保健衛生所

平成24年12月4日(1日齢時)に入雛し、平成25年1月20日に育雛鶏舎から育成鶏舎に移動した採卵鶏群において、1月30日に脚麻痺と斜頸を主徴とする異常鶏が散見され、経時的にへい死が増加した。通報があった3月15日及び25日に立入し、脚麻痺及び頸部捻転等の神経症状、羽毛逆立並びに削痩を確認した。病理解剖学的に肝臓の腫大及び白斑の形成、脾臓の腫大並びに坐骨神経の腫大及び横紋の消失が認められ、病理組織学的に肝臓、脾臓、腎臓、十二指腸、脳幹及び脊髄の毛細血管周囲並びに坐骨神経でリンパ様細胞の浸潤が認められたため、マレック病であると診断した。鳥インフルエンザ、ニューカッスル病及び細菌の関与はその他検査により否定した。本病は適切なワクチン接種及び飼養衛生管理により制御できるが、ワクチン接種によって予防できるのは腫瘍形成であり、野外ウイルスの感染を防ぐことはできない。本鶏群では1日齢時に本病ワクチンの接種が行われていたが、移動前の育成鶏舎の未消毒や一部の前回鶏群が育成鶏舎内に残留していたことに加えて、育成鶏舎へ移動や寒冷によるストレスによる免疫力低下が起こったと考えられ、本病の発生に至ったと推察された。

2. 食鳥検査でみられたPlasmodium juxtanucleareによるブロイラーの鶏マラリア

日髙 遼太郎(鹿児島県末吉食肉衛生検査所)

2013年9~10月,約50日齢のブロイラーを処理する食鳥処理場において,脾腫を呈するブロイラーが散見された。そのうち19羽について,病理学的および遺伝子学的検査を実施した。症例は,肉眼的に著しい脾腫がみられたが,と体やその他臓器には肉眼病変は認められなかった。脾臓の直接塗抹標本では,赤血球核近傍に原虫寄生を認め,HE染色では,赤脾髄拡張,マクロファージ活性化,マラリア色素沈着がみられた。電子顕微鏡下においても,赤血球核近傍や崩壊した赤血球内に原虫が認められた。また,脾臓生材料を用いたマラリア原虫遺伝子を標的とするPCR反応で特異的増幅を認め,増幅産物のダイレクトシーケンスの結果,P. juxtanucleareと高い相同性を示した。以上の結果から,本症例をP. juxtanucleareによる鶏マラリアと診断した。鶏マラリアは,わが国では一般的に病原性が低く,軽視されがちであるが,ロイコチトゾーン症との鑑別や農場の環境衛生の指標として注意が必要である。

3. ワクモの市販殺虫剤に対する抵抗性出現の推移、被害、新薬なども含めた防除

村野 多可子(全国農業協同組合連合会家畜衛生研究所)

平成16年から全国の養鶏生産現場から採取されたワクモについて市販殺虫剤に対する感受性を調査してきた。当初は単剤のみで効果を発していたが、現在は2種類の殺虫剤の併用でも効果がみられないワクモも出現してきた。被害としては、当初は汚卵の発生が多かったが、最近は鶏側に対する影響も大きく、ワクモの吸血による高い死亡率やストレスにより免疫低下が起こり、他疾病の誘発も増加してきた。また、防除効果のある薬剤が減少してきたため、殺虫剤の頻回散布による労力、経費が大きな負担となっている。一昨年の秋に今までの殺虫剤とは作用機序が異なる新薬が発売になった。本剤は非常に高い防除効果を示すが、使用方法は難しく、散布間隔が短い場合や散布時のワクモの鶏舎内汚染度により感受性の低下が思った以上に早期に起きている。ワクモが問題になってから、殺虫剤以外のワクモに対する資材がいくつも販売されている。全く効果のないものから、効果がみられても使用が難しいものなどがある。今、比較的話題になっている資材について簡単に紹介したい。

4. 非定型高病原性ニューカッスル病(ND)の野外実態

Dennis V. Umali、加藤 宏光((株)ピーピーキューシー研究所)

高病原性(V)NDは劇甚な病勢ゆえに業界ではその防圧に余念がない。現在オイルワクチンや安定的効果が期待できるワクチンを使い、ほぼ完全な防疫体制が期待できている。しかし明らかなVND症状を伴わないウィルス(V)がフィールドに潜伏するとすれば、防疫の穴を潜って被害を与えることも危惧される。
演者らは、略々15年前にIB等と診断された野外症例からVNDV、3株を分離した。
各症例は、当時はあたかもIB(ワクチン型と誤診される)事例と思われた3例である。症例1:62週齢でIBVを分離。その後強制換羽を経て77週齢時点で一過性の産卵率低下と軽度の呼吸器症状を確認。IBVとして保存。症例2:26週齢に産卵率が約10%低下。漸次回復。48週齢で大きな産卵ダメージを欠く呼吸器症状を呈示。この際の分離Vを保存。症例3:生産性不詳。本事例は複合型の呼吸器症状を呈し、複合型IB様感染症と推定。病原分離ではIB様Vの他Gallibacterium、Mycoplasma spp.、大腸菌が分離された。
これらは、演者が学位取得テーマとして取上げ、鳥取大学の詳査でVNDVと判明した。各々の症例実態を示し、またVの遺伝子データにその位置づけを紹介する。野外に潜伏するVNDの可能性は産業リスクとして注目される。

5. 異常行動を示したハトのニューカッスル病を疑う事例

藤森 英雄(東京都家畜保健衛生所)

平成24年1月、牛舎内にいた飛翔困難、斜頸、旋回運動等の異常行動を示す4羽のハトの病性鑑定を実施。外観の異常無く、解剖所見では、そ嚢、筋胃に牛飼料が充満し、3羽の腺胃に粟粒状黒色結節があった以外の著変は無し。4羽中2羽の臓器からのウイルス分離(発育鶏卵接種、5代)、ニューカッスル病(以下ND)ウイルスの遺伝子検査は共に陰性、有意菌は未分離だった。また、ND-HI試験では40~160倍だった。ホルマリン固定後の腎臓表面に、白色小結節が散見する個体があり、組織学的検査では、腎尿細管の変性に伴い間質にびまん性・結節性にリンパ球が浸潤および大脳に軽度の囲管性細胞浸潤が4羽共通に見られ、腺胃の結節はテトラメレスの寄生だった。また、4羽中1羽の腎臓でNDの免疫染色及び組織切片からのND・PCR検査が陽性(動物衛生研究所実施)となり、PCR産物の解析によりGenotypeVI、F蛋白のアミノ酸配列は強毒型であると推測された。さらに、同年2月、同一農場で飛翔困難なハトが1羽再確認されたが、糞便からのNDウイルスは未分離だった。本事例は、ND感染で異常行動を示したハトの事例と考えられた。

6. 顔面腫脹を呈する採卵鶏が認められた農場での飼養衛生管理改善の取り組み

宮地 明子(神奈川県県央家畜保健衛生所)

平成25年7月、飼養羽数7千羽の採卵鶏農場で、死亡率増加と顔面腫脹を呈する鶏が確認され、病性鑑定を実施したところ、トリメタニューモウイルスと細菌感染による頭部腫脹症候群が強く疑われたが、確定診断には至らなかった。
当該農場では、飼養衛生管理基準の遵守状況の調査により、1) 鶏の健康状態の確認 2) 鶏舎の清掃・消毒等の項目に不備が認められており、改善指導中であった。更に今回の聞き取り調査により、3) ワクモの大量発生 4) アライグマ等野生動物の侵入被害など、飼養環境に多数の問題を抱えている事が判明した。これらの問題を改善することで、本症の発生を低減できるのではないかと考え、次のような取り組みを実施した。
改善策は安価で効果的な方法を飼養者と協議し、改善計画を作成して段階的に指導した。具体的には 1) 発症鶏のケージ・マーキングと記録を行い、個体観察の徹底を図る 2) 空きケージの消毒に発泡消毒を利用する 3) 段ボールを利用してワクモの駆除を行う 4) 県や市の所管課と野生動物対策を検討する等、工夫を凝らして実施した。対策後、死亡率は0.69%から0.03%に減少し、新たな発症は認められず、疾病の発生予防と生産性の向上が図られた。