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第205回つくば病理談話会演題

378) 原因特定に至らなかった馬の化膿性外耳炎 [馬の外耳炎。X大腸炎を疑う]

  • 提出者(所属): 水野 剛志(群馬県家畜衛生研究所)
  • 動物種: 馬
  • 品種: サラブレッド
  • 性別: 去勢雄(?馬)
  • 年齢: 6歳齢
  • 死・殺の別: 斃死
  • 解剖日時: 2014年9月8日
  • 解剖場所: 群馬県家畜衛生研究所

発生状況および臨床所見

飼養頭数22頭の乗馬クラブにおいて2014年9月7日、当該馬に顔面浮腫、外耳のびらんがみられたため、担当獣医師が副腎皮質ステロイド及びリンゲル液を投与した。その後、顔面浮腫は治まったものの腹痛、沈鬱状態となり、8日朝に死亡した。

病原検索

細菌学的検査では、主要臓器と外耳道拭いスワブから有意な菌は分離されなかった。

剖検所見

外部所見では、両耳根部から両目周囲にかけて斑状の脱毛および脱毛部の暗赤色化が認められた。また、両外耳において広範な赤色化と汚茶色の耳垢の貯留がみられた。剥皮後所見では、左側胸部において皮下出血がみられた。また、全体に黄疸が認められた。内部所見では、腸管は全体に漿膜面が暗赤色を呈し、ガスにより重度に拡張していた。小腸漿膜面に少量の血餅付着が散見され、回腸の一部に漿膜面の黒色変化がみられた。

組織所見(提出標本: 左耳介)

耳介の表皮は広範にわたって剥離しており、露出した真皮の表面には多数のグラム陰性桿菌が付着していた。表皮がわずかに残存する部位では、真皮との境界部において好中球の浸潤がみられた。一部の毛包の構造は崩壊し、周囲に多数のグラム陰性桿菌がみられた。また、一部の真皮領域では軽度の出血がみられた。肝臓では、小葉間結合織において肝動脈の血管壁に軽度のフィブリノイド変性がみられた。心臓では心外膜および心内膜の一部に重度の出血がみられた。肺では胸膜において重度の出血がみられた。十二指腸、空腸の粘膜固有層および粘膜下組織において充うっ血が広範にみられ、一部では出血もみられた。回腸では粘膜下組織の水腫性変化がみられ、血管壁のフィブリノイド変性が多発性にみられた。

討議

露出した真皮表面にグラム陰性桿菌が多数みられましたが、好中球が浸潤している箇所ではほとんど菌体は認められませんでした。この菌が病変に関与したと考えるべきかご討議をお願いします。また、馬の外耳炎について同様の事例を経験されている方がいらっしゃいましたら、ご教授願います。

診断

  • 組織診断:原因特定に至らなかった馬の化膿性外耳炎
  • 疾病診断:馬の外耳炎。X大腸炎を疑う

379) 豚のStreptococcus dysgalactiae ssp. equisimilisが分離された硝子血栓及び菌栓塞を伴う化膿性脳炎 [豚レンサ球菌症]

  • 提出者(所属): 阿部 祥次(栃木県県央家畜保健衛生所)
  • 動物種: 豚
  • 品種: LWD
  • 性別: 去勢
  • 年齢: 約130日齢
  • 死・殺の別:斃死(死後約2時間)
  • 解剖日時:2016年1月15日
  • 解剖場所:栃木県県央家畜保健衛生所

発生状況および臨床所見

2016年1月7日から他の豚に比べ伏している時間が長くなり、1月11日に起立不能を呈し、1月15日に死亡した。治療は1月7日にビタミン剤を投与したのみで、抗生物質の投与や飼料添加は行っていない。1月7日以前には気になる臨床症状は認められなかった。

病原検索

細菌学的検査で肝臓、脾臓、腎臓、心臓、心臓の疣贅、肺、脳及び関節液からStreptococcus dysgalactiae ssp. equisimilis(api 20 STREP、4463557、99.8%)が分離された。

剖検所見

皮膚は全身性にチアノーゼを呈していた。肝臓と脾臓は暗赤色、脆弱で、腎臓は両側性に多発性の粟粒大から麻実大の梗塞と点状出血が認められた。心臓は僧帽弁等に疣贅性心内膜炎が観察され、心外膜は心?膜と軽度に癒着し、心嚢水が軽度に貯留していた。肺、胃、腸管及び脳は充血していた。その他、右気管気管支リンパ節の充血、膀胱粘膜における散在性の点状出血、両側性に膝関節液の軽度貯留及び混濁と絨毛の軽度増生が認められた。

組織所見(提出標本: 大脳(後頭葉))

皮質及び髄質では、多発性の微小膿瘍とグリオーシスが観察され、微小膿瘍にはごくまれにグラム陽性球菌が認められた。また、散在性に軽度~中等度の好中球浸潤を伴う血管炎、まれに硝子血栓、ごくまれにグラム陽性球菌塊による菌栓塞が観察された。同様の病変は、大脳、脳幹及び小脳で一様に観察された。
その他、壊死性化膿性糸球体腎炎、化膿性心筋炎及び心内膜炎、軽度の肺水腫、化膿性リンパ節炎(気管気管支、浅頚、腸骨下、鼠径、膝下)が観察された。また、上述した組織に加え、脾臓、舌、胃、小腸及び眼球では、主に中小血管を主体とした化膿性血管炎、硝子血栓及び菌栓塞が散見された。疣贅は菌と血液を混じた線維素で構成されており、弁の表面には多量の菌が付着していた。観察された菌はグラム陽性球菌であった。

討議

レンサ球菌症で脳に多発性の微小膿瘍を形成した症例はまれと思われる。形成された疣贅の剥脱による菌の血行性伝播と考えたが、脳で化膿性病変が観察される例の経験があるか、また、脳における本病変の形成機序について御教授願いたい。

診断

  • 組織診断: 豚のStreptococcus dysgalactiae ssp. equisimilisが分離された硝子血栓及び菌栓塞を伴う化膿性脳炎
  • 疾病診断: 豚レンサ球菌症

380) ワラビ中毒牛の肝臓におけるMannheimia属菌による血栓を伴う多発性巣状壊死 [Mannheimia属菌による敗血症]

  • 提出者(所属): 大泉 卓也(長野県松本家畜保健衛生所)
  • 動物種: 牛
  • 品種: ジャージー種
  • 性別: 雌
  • 年齢: 6ヶ月齢
  • 死・殺の別と方法:鑑定殺
  • 解剖日時: 2013年10月7日

発生状況および臨床所見

2013年6月24日から他の牛2頭と放牧されていた。9月20日に別の放牧地に移され、10月7日に他の牛2頭の死亡を発見。当該牛は沈うつ、血便を呈し衰弱していたため予後不良と判断し、病性鑑定を実施した。移動前の放牧地にはワラビの群落が確認され、移動後の放牧地にはワラビはわずかに生えている程度だった。

病原検索

生化学検査では第一胃内容物からワラビの特異遺伝子が検出された。細菌学検査では心臓、肺、肝臓および腎臓からMannheimia haemolytica complexが分離された。ウイルス学検査では直腸便を用いたBCV、GAR、GBR、GCR、BToV、Pesti、OHV2のPCR検査陰性。寄生虫検査では直腸便から虫卵は検出されなかった。

血液・生化学的検査

血液検査は、RBC:301万/μl、WBC:1,000/μl、PCV:11.8%、血小板2.0万/μl。血液生化学的検査は、TP:4.6g/dl、Alb:1.58 g/dl、GOT:156U/l、γ-GTP:17 U/l、CK:108 U/l、BUN:13.3mg/dl、T-Cho:18 mg/dl、Ca:7.4 mg/dl、iP:3.7 mg/dl。

剖検所見

外貌は高度に削痩し、眼瞼周囲、四肢、会陰部および乳頭に痂皮が認められた。大腿骨骨髄の黄色化がみられ、耳介、腹膜、腎臓皮質、結腸粘膜などに出血がみられた。肺と肝臓にピンポン球大の赤色結節が認められた。第一胃内容物に未消化のワラビは視認されなかった。

組織所見(提出標本: 肝臓)

肝臓では多発性巣状ないし癒合性の壊死がみられた。壊死巣の血管、類洞内にはグラム陰性桿菌塊、線維素性血栓、うっ血、出血がみられ、血管壁のフィブリノイド変性が認められた。また、菌塊周囲の肝細胞は壊死し好酸性を増していた。グリソン鞘周囲にリンパ球、形質細胞の軽度浸潤がみられた。大腿骨骨髄では造血細胞は消失し、脂肪細胞に置換されていた。肺では間質の血管内に血栓および菌糸が認められ、周囲実質に梗塞巣がみられた。菌糸は直角に分枝し、細胞質は空虚で隔壁を欠いていた。肺胞壁のうっ血、毛細血管内にグラム陰性桿菌塊の塞栓が認められた。心臓、腎臓の間質、第四胃、空回腸、盲腸の粘膜固有層および下組織、胆嚢の粘膜固有層に出血がみられた。

討議

Mannheimia属菌の病変は燕麦様細胞の出現が特徴かと思うが、本症例で燕麦様細胞が認められなかったのはワラビ中毒による白血球減少のためと考えてよいか。この病変の形成機序についてご意見をお聞かせ下さい。

診断

  • 組織診断: ワラビ中毒牛の肝臓におけるMannheimia属菌による血栓を伴う多発性巣状壊死
  • 疾病診断: ワラビ中毒牛のMannheimia属菌による敗血症