花き研究所

キク科植物が橙色花色を作り出す3種類のしくみ

担当者名:大宮あけみ・岸本早苗

研究テーマについて

はじめに

キク科には栽培ギクのように暗い橙色花色を示す種やキンセンカやマリーゴールドのように非常に鮮やかな橙色を示す種が存在します。このような色調の違いが生まれるしくみを明らかにするために、キク科に属する園芸植物9種の黄色系品種と橙色系品種の花弁に含まれるアントシアニン(赤~紫色の色素)とカロテノイド(黄~赤色の色素)について調べました。その結果、これらの植物が橙色を作り出す3種類のパターンが存在することが明らかになりました。

1. 黄色カロテノイド+赤色アントシアニン

ガーベラ、キク、ジニアの黄色系品種も橙色系品種も黄色色素としてほぼ同量のカロテノイドを含んでおり、また、カロテノイドの成分に差はありませんでした(図2)。しかし、橙色系品種には黄色系品種に比べてアントシアニンがより多く蓄積しており、黄色いカロテノイドと赤色のアントシアニンの重なりによって橙色を作り出していることがわかりました。

図1 キク‘ダークドラマティック’(左)と‘サニーオレンジ’(右)
図1 キク‘ダークドラマティック’(左)と‘サニーオレンジ’(右)

図2 ガーベラ、キクおよびジニアの橙色系品種および黄色系品種の花弁のアントシアニン量およびカロテノイド量
図2 ガーベラ、キクおよびジニアの橙色系品種および黄色系品種の花弁のアントシアニン量およびカロテノイド量

2. 大量の黄色いカロテノイドの蓄積

マリーゴールドやヒマワリは黄色系品種も橙色系品種も主にルテインと呼ばれる黄色いカロテノイドを含んでいましたが、橙色系品種では黄色系品種の11倍~44倍量のカロテノイドが蓄積していました(図4)。いずれの品種もアントシアニンはほとんど含まれておらず、大量の黄色カロテノイドの蓄積によって橙色を作り出していることがわかりました。

図3 アフリカンマリーゴールド‘オレンジアイシス’(左)と‘イエローアイシス’(右)
図3 アフリカンマリーゴールド‘オレンジアイシス’(左)と‘イエローアイシス’(右)

図4 アフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールドおよびヒマワリの橙色系品種および黄色系品種の花弁のアントシアニン量およびカロテノイド量
図4 アフリカンマリーゴールド、フレンチマリーゴールドおよびヒマワリの橙色系品種および黄色系品種の花弁のアントシアニン量およびカロテノイド量

3. 黄色カロテノイド+赤色カロテノイド

キンセンカ、ガザニア、オステオスペルマムの橙色系品種と黄色系品種はカロテノイド量やアントシアニン量に大きな差はありませんでした(図6)。しかし、カロテノイドの成分を見てみると、橙色系品種には黄色系品種に含まれていたものと同様の黄色いカロテノイドに加えて、赤色のカロテノイド成分が蓄積しており、異なった色調のカロテノイドが混じり合うことによって橙色を作り出していることがわかりました。

図5 キンセンカ‘アリスオレンジ’(左)と‘アリスイエロー’(右)
図5 キンセンカ‘アリスオレンジ’(左)と‘アリスイエロー’(右)

図6 キンセンカおよびガザニアの橙色系品種および黄色系品種の花弁のアントシアニン量およびカロテノイド量
図6 キンセンカおよびガザニアの橙色系品種および黄色系品種の花弁のアントシアニン量およびカロテノイド量

おわりに

キクやジニアなどのようにアントシアニンとカロテノイドの重なりによって作り出される橙色は色調が暗い傾向がありました。いっぽう、マリーゴールドやキンセンカなどのようにカロテノイドのみで作り出される橙色は非常に明るく鮮やかでした。これらの知見は今後様々な色調を持つ橙色花色の育種を行う上で、キク科の植物だけにとどまらず多くの花き類において有用であると考えています。