果樹研究所

酵素剥皮の紹介

はじめに

近年、皮むきを必要としないカットフルーツ等の果実加工品の消費が拡大していますが、その背景として、食べる前に皮を剥くことや生ゴミの処理といった手間の問題から生鮮果実の摂取を敬遠する消費者の心理があることが指摘されています。また、消費者ニーズの多様化により、食べやすさだけでなく、より新鮮で生の果実に近い品質であることが果実加工品に求められるように変化しています。

酵素剥皮の優れた点は、従来の酸やアルカリによる剥皮と比較して、素材の品質を生かした加工が可能であることです。そのため、酵素剥皮は食べやすさや新鮮さといった果実加工品への近年のニーズに対応できる優れた加工法として、今後の普及と利用の拡大が期待されています。

酵素を使った食品加工

酵素剥皮の例酵素は化学反応を穏やかな条件で促進するタンパク質です。酵素無しで化学反応を進めようとすると、温度、pH、気圧などが特殊で過酷な条件が必要になります。したがって、酵素による加工には、素材の変質を最小限に抑えられるという利点があります。

食品の加工で酵素を利用しようとすると、酵素と食品成分が効率良く混ざり合うことが重要です。そのため、食品加工分野における酵素の利用は、当初は粉砕され、均質化された液体状の食品に対するものが中心でした。これまでに果実の加工では、果肉のペースト化、搾汁効率の向上、果汁の清澄化等に酵素が使われています。

近年、酵素の新たな利用形態として、粉砕されず、形を残した固形状の食品に対しても利用されるようになりました。生鮮果実への利用として、皮が付いた状態の果実に酵素を作用させることで、皮を簡単に除去できることがカンキツで初めて明らかになりました。カンキツの果皮を酵素処理で除去する基本技術が米国でサンキスト社により開発され、1990年にわが国でも特許出願されました(特許第2572476号)。

剥皮に使用する酵素剤

果実の剥皮には、食品添加物としての利用が法的に認められている酵素のみを使用します。

果実類の酵素剥皮は、ペクチナーゼ活性(ペクチンを分解する酵素活性)による処理が基本となります。したがって、ペクチナーゼ活性を有し、植物組織を柔らかくする作用を持つ酵素剤であれば、、基本的にはどれでも酵素剥皮加工に使用できます。ペクチナーゼ活性だけでは作用が弱く、剥皮がうまくできない場合、セルラーゼ活性(セルロースを分解する酵素活性)などを組み合わせることで、よりきれいに剥皮することが可能になります。しかし、セルラーゼ活性が強すぎると、果皮だけでなく果肉にまでも酵素の作用が及び、果肉の障害が発生してしまうことがあるので注意が必要です。

酵素剥皮の原理

植物細胞同士の接着に関わる成分の一つにペクチンがあります。果皮組織の細胞の隙間にペクチンを分解する酵素を導入して作用させ、接着していた細胞をバラバラに分離することが、果実類の酵素剥皮技術の原理です。

したがって、酵素剥皮の成否はいかにして果皮組織に酵素液を導入できるかにかかっています。果皮の表面は水をしっかりはじくため、果実を酵素液に浸漬しただけでは、果皮への酵素液の導入は困難です。このため、果実を酵素液に浸漬する前に、果皮に酵素液が導入する経路を確保するための何らかの前処理が必須になります。

酵素剥皮法は、酵素処理の前処理として物理的処理や化学的処理を組み合わせることで、カンキツだけでなくカキ等でも適用可能になりました。今後、酵素処理・物理的処理・化学的処理の各種組合せを検討するとことで、酵素剥皮が可能な品目や品種の拡大が期待されます。

今後の展開

現在、カンキツを中心に酵素剥皮を利用した果実加工品の販売や試作の取組みが増えています。今後はカンキツ以外の果実についても技術が普及することで、国産果樹の新たな加工品の需要創出と消費拡大に寄与することが期待されます。

ピンクとイエローの二色のブンタン果肉カップ入りフルーツの販売イメージ

果実加工品

果実加工品

果実の消費に関する参考資料

  •  財団法人中央果実生産出荷安定基金協会,平成23年度 果実加工流通消費調査報告書 -コンビニ等における果実販売拡大調査-,中央果実基金調査資料,215,pp.5-6 (2012).
  •  株式会社三菱総合研究所,平成22年度(財)中央果実生産出荷安定基金協会委託事業 果物の消費増進に関する調査・分析事業報告書,中央果実基金調査資料,214,p.14 (2011).
  •  公益財団法人中央果実協会,平成24年度 果実加工流通消費調査報告書 -果物の消費に関するアンケート調査-,中央果実協会調査資料,218,p.145 (2013).