果樹研究所

酵素剥皮の紹介

酵素剥皮の利点 その1 果肉品質に関して

(1)果肉細胞の損傷が少ない

果肉細胞の損傷が少ない

従来のカットフルーツ加工では、ナイフ等の刃物で物理的に剥皮するため、カット面の細胞が破断され損傷を受けます。これが引き金になり、細胞内にあった液体を保持することができなくなり、ドリップ(果汁の漏出)が発生します。

細胞内には液胞や色素体(葉緑体)といった膜で囲まれた構造物があります。酸化される基質であるポリフェノールは液胞に、酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)は色素体に存在し、各々が別々の膜構造内に隔離されているため、通常の無傷の状態の果肉細胞ではPPOはポリフェノールを酸化することはありません。ところが、ナイフカットにより細胞が損傷を受けると、これらの膜構造も破壊されるため、ポリフェノールとPPOが共存した状態となり、PPOがポリフェノールを酸化する反応が始まります。この結果、褐変、果肉成分の酸化などの果実品質の劣化が進行します。

一方、酵素による剥皮では、細胞を破断せず、細胞間の接着物質であるペクチンを分解することで、穏やかな方法で細胞同士を分離させる処理なので、細胞の損傷レベルは最小限であると考えられます。酵素剥皮の導入により、従来のナイフ剥皮よりも剥皮後の果実品質の劣化を抑えられるようになりました。

 (2)低温処理で香り(フレーバー)を維持できる

果実の魅力の一つである新鮮な香り(フレーバー:口内に食品を入れたときに感じる香り)には、加熱や加温で変性しやすいという弱点があります。酸やアルカリといった薬剤による従来の化学的な剥皮方法では、その工程の中で果実を加熱や加温する必要があるため、香り(フレーバー)の維持が困難でした。一方、酵素剥皮では、温めながらでも冷やしながらでも処理が可能であるため、冷やしながら低温で処理することで、香り(フレーバー)を維持した加工が可能です。

 (3)剥皮した表面が滑らかな外観である

剥皮した表面が滑らかな外観である

ナイフや刃物による剥皮では表面が角張った外観になりますが、酵素剥皮では表面が滑らかな外観の果肉に仕上げることが可能です。このため、丸ごとの形状を残せるのも特徴の一つであり、加工用途が広がります。

 

酵素剥皮の利点 その2 処理工程に関して

(1)液体での簡便な処理である

酵素剥皮は、果実を液体に浸す処理が中心なので、果実の形状に影響されることなく、効率よく剥皮できます。酵素処理の工程に関しては、最低限必要な器具は酵素液を貯められる容器で、特殊な装置や技術を必要としません。ただし、酵素処理の前に酵素液を果皮にしみ込みやすくするための処理をする場合、別途機材類が必要になることがあります。

 (2)酵素処理条件を個別に最適化できる

酵素剥皮は幅広い条件設定が可能で、加工処理する現場の状況に応じて、処理条件を個別に最適化することが可能です。

加工には原材料費以外に設備費、酵素剤費、人件費など様々な経費がかかります。また、加工する果実の数量と処理現場の規模の大小により、それぞれ適した工程が必要となります。

例えば、大規模加工の場合、各種加工機械の設備投資が必要で、従業員を雇用する食品工場が該当します。このような場合、酵素処理条件は、品質安定のために温度やpHを一定に調整し、人件費低減のため、高濃度で短時間処理するのが有効です。

一方、小規模加工の場合、従業員は雇用しない家族経営の農家や加工業者が該当します。このような場合、酵素処理条件は、剥皮後も包装などの工程もあることから、労力分散のため、低濃度で長時間処理することで、一日目に酵素液浸漬までを、二日目に剥皮とその後の加工処理をする工程が考えられます。