北海道農業研究センター

テンサイ育種グループ

テンサイ複合耐病性品種「北海みつぼし」

テンサイは北海道における基幹産業の製糖業を支え、地域社会の発展にとって欠かすことのできない原料作物です。国の生産目標に沿って高糖多収品種による原料の安定供給が求められていますが、諸外国と比べて高温・多湿の栽培環境下にある北海道では、褐斑病や黒根病等が恒常的に発生し、収量ならびに製糖原料の品質の低下をもたらしています。また、農家戸数の減少や高齢化に伴い、一戸あたりの栽培面積が増加しており、現場からは省力栽培が可能なテンサイの直播栽培への期待が高まっています。

DNAマーカー等を活用した複合病害抵抗性品種の育成

これまで当グループが取り組んできた黒根病抵抗性遺伝子や高度褐斑病抵抗性に関与するDNAマーカー等を活用して、被害軽減が可能な複合病害抵抗性品種を育成しています。その際、テンサイ育種の強みである病害抵抗性遺伝子を集積した細胞質雄性不稔系統(CMS)を活用し、海外の種苗会社と国際共同研究を進め、多収と耐病性を兼ね備えた優良品種の短期育成を目指しています。さらに育種母本を効率的に開発するため、病害抵抗性や抽苔耐性等の実用遺伝形質に関与する有用遺伝子の特定やこれらを識別するDNAマーカーの開発を進めているほか、近年新たな問題となっている「ビート西部萎黄ウイルス(BWYV)」に対する抵抗性育種素材の選抜も行っています。

省力栽培が可能な直播栽培向き品種の育成

直播栽培については、出芽の安定化や旺盛な初期生育の確保に注目し、狭畦密植栽培で多収を示すF1の選定を行います。

これまでの成果として、スウェーデンのシンジェンタ社との国際共同研究により、「黒根病」と「褐斑病」に加えて「そう根病」の抵抗性を併せ持つ3病害抵抗性品種「北海みつぼし」(平成23年)を育成しました。「北海みつぼし」の抽苔耐性や糖分をさらに改良した有望系統「北海104号」の開発も進めています。

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