九州沖縄農業研究センター

「にこまる」の育成

(1)「にこまる」の特性について

「にこまる」は、九州のブランド米「ヒノヒカリ」に代わりうる品種として、おいしさ、品質、収量の3拍子揃った米を目標に開発された品種です。

母親は近畿・中国地域の6府県で奨励品種になり、急速に普及が進んでいるおいしい早生(わせ)のお米「きぬむすめ」、父親には倒れにくく品質の良い「北陸174号」(熊本県で普及している「いただき」の兄弟)の交配組み合わせから育成されました。両親ともに「コシヒカリ」の血を引くおいしい系統で、「にこまる」はその両親の良いところを受け継いだ品種です。

図1「にこまる」の系譜図
図1「にこまる」の系譜図

写真1「にこまる(左)」と「ヒノヒカリ(右)」の立毛草姿(育成地)
写真1「にこまる(左)」と「ヒノヒカリ(右)」の立毛草姿(育成地)

出穂期・成熟期は「ヒノヒカリ」並かやや遅い、暖地向きの中生種です。玄米は粒張りが特に良く、高温年でも白未熟粒の発生が少なく、「ヒノヒカリ」より明らかに優れます。

ご飯の食味は、光沢が良く粘りが強く、「ヒノヒカリ」と同等かそれ以上です。長崎県産の「にこまる」が米の食味ランキング(穀物検定協会選定)で4年連続で最高ランクの「特A」評価を受け、また各地の食味コンテストでも数多く上位入賞するなど、その食味の良さは広く認められつつあります。

収量は高温年でも安定しており、同じ面積の水田から「ヒノヒカリ」より5~10%以上多く米を収穫出来ます。耐倒伏性は「ヒノヒカリ」並かやや強く、いもち病抵抗性は「ヒノヒカリ」並です。

栽培法は基本的には「ヒノヒカリ」の栽培管理に準じますが、苗の伸長が早く初期生育が大きい特性があるため、「ヒノヒカリ」に比べ初期生育を抑制気味にして、徒長させないように管理することが重要です。栽培の方法については下段の「暖地向き水稲新品種「にこまる」栽培マニュアル(暫定版)」(PDF)をご覧ください。

図2「にこまる」の奨励品種決定調査における玄米品質
図2「にこまる」の奨励品種決定調査における玄米品質

図3「にこまる」の奨励品種決定調査における玄米収量
図3「にこまる」の奨励品種決定調査における玄米収量

図4登熟気温と背白粒発生の関係
図4登熟気温と背白粒発生の関係(平成18年度長崎県農林試研究成果情報)

別表「にこまる」の食味コンテスト入賞歴
別表「にこまる」の食味コンテスト入賞歴

写真2高温年の「にこまる」(左)と「ヒノヒカリ」(右)の玄米品質

写真2高温年の「にこまる」(左)と「ヒノヒカリ」(右)の玄米品質(2010年育成地産)

記者発表(17年):にこまる(水稲農林411号)
研究成果情報(16年):極良食味で良質の暖地向き中生水稲新品種候補系統「西海250号」

品種パンフレット(にこまる)

栽培マニュアル(にこまる)

・九州沖縄農業研究センター研究報告第54号『食味と高温登熟条件下での玄米品質に優れる多収性水稲品種「にこまる」の育成』

(2)「にこまる」の登熟特性について

「にこまる」が「ヒノヒカリ」より多収で品質も良好となるのは、どのようなメカニズムによるのでしょうか。九州地域では前述したように、登熟期に高温と寡照が重なることが多く、米の主成分である炭水化物の調達をこの時期の光合成に依存しにくい状況だと考えられます。このようなときイネは、登熟期直前までに茎に蓄えた炭水化物(NSC;Non Structural Carbohydrate=非構造性炭水化物)を使って米を実らせることができます。そこで、「にこまる」と「ヒノヒカリ」NSCの量を比べてみました。その結果、「にこまる」では「ヒノヒカリ」より明らかに茎内のNSCが多く、この炭水化物を使って高温・寡照条件でも登熟を良好にして多収と高品質を実現していることが示されました。

表1にこまるとヒノヒカリの穂揃期の茎重・NSCおよび収量・収量構成要素・玄米品質

図5穂揃期の茎における一籾あたりのNSCと登熟度との関係

参考:平成18年度成果情報:「水稲品種「にこまる」では「ヒノヒカリ」より穂揃期の茎のNSCが多く登熟が良好である」(未公表)

(3)「にこまる」の普及状況について

「にこまる」は平成24年現在、長崎県、大分県、静岡県で奨励・認定品種として、また福岡県、佐賀県、熊本県、岡山県、高知県、山口県など15府県で産地品種銘柄としてJA等の自主的な取り組みにより作付けされています。なお、平成24年の栽培面積は7,000ha以上と推定され、今後も西日本を中心にさらに普及が拡大するものと思われます。

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図6 「にこまる」の普及地帯(平成24年3月)

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図7 「にこまる」の普及面積(平成24年3月)

(4)2010年の高温条件下での「にこまる」の作柄について

2010年は記録的な高温年でしたが、九州で作付けされた「にこまる」は「ヒノヒカリ」よりも収量、品質ともに上回る作柄でした。熊本県では92%(ヒノヒカリ:11%)という高い一等米比率を記録しています。奨励品種決定調査でも各県で品質・収量ともに「ヒノヒカリ」を上回り、食味もすぐれていました。

表2 2010年の「にこまる」の検査成績(一等米比率%)

表2 2010年の「にこまる」の検査成績(一等米比率%)

(5)種子の入手方法等について

当センターで育成した新品種の種子の入手するためには当センターの許諾を得た種苗業者等からご購入下さい。なお、詳細については下記をご覧下さい。

「にこまる」の種子の許諾先は次のとおりです。

(6)関連リンク

長崎県研究成果情報(18年)