九州沖縄農業研究センター

所長室から

研究所一般公開に思う

所長 山川 理

yamakawaippan.gif11月13日の畑作研究部(都城市)を最後に今年度の研究所一般公開が終わった。本部(熊本県西合志町)、野菜花き研究部(福岡県久留米市)、水田作研究部(福岡県筑後市)など4カ所で延べ4000名以上の参加者があった。本部以外は隔年の公開で、開催日もまちまちである。今年はどこでも晴天に恵まれ、いつになく賑わった。この行事を始めてから10年以上になる。いまはやりの「開かれた何とか」を目指しての企画である。当初は平日開催であり、研究を見せるという感じの硬いものであった。土曜日開催とし、お土産や試食を増やすことで多くの人を集めるという現在の形ついては賛否両論があった。しかし、参加者の便宜を第1に考えることは極当然のことである。催し物は人が集まらなければ始まらない。各部所とも人集めに工夫を凝らしていると思うがまだ改善すべき点は多い。展示室については特に考え直さなくてはいけない。参加者が誰であれ、内容を理解できる展示でなければならない。学会など専門集会で使うようなパネルではいけないし、実物がなくパネルのみもいただけない。パネルで満足できない人には別途持ち帰り資料を準備すればよい。また、研究の背景となる説明パネルも役に立つ。研究内容だけを見ても、その研究がなぜ重要なのかわからない場合も多い。要は、自分の家族にもよく理解できるということである。お土産や試食についてはよく分かる説明が必要だと思う。何となく出しているというのでは意味がない。なぜ出品しているのか、受け手にわかるように説明して欲しい。今回も畑作研究部では参加者が多かった。展示室での意見交換も活発であった。なぜか。他の所はよく考えて、参考にしてもらいたい。参加者の目線で、地元の人達と一緒に、各所在地ともよく連携してということが肝要と思われる。

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4月20日野菜花き研究部(久留米市)

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10月30日水田作研究部(筑後市)

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11月6日本部(西合志町)

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11月13日畑作研究部(都城市)

自由と規律

人事・目標担当補佐官 門馬信二

「自由と規律」池田潔著(岩波新書)

この本の初版は1949年、2003年に87刷発行という非常に息の長い本です。内容はイギリスの主に支配階級子弟の教育機関といわれ、著者が教育を受けた全寮制のパブリックスクールでの生活を記したものです。ここでは支配階級の子弟に厳格な規律の下、スパルタ式教育が行われ、オックスフォードやケンブリッジに進学し、社会の指導的立場に立つ卒業生の精神教育の場となっている。ここでの多くのエピソードが綴られており、ノーブレスオブリージの例など以前どこかで聞いた話もいくつかありました。既に読んだ方もいると思いますが、私が特に印象深かったものを簡単に紹介します。それはピアノが上手で数学の苦手な学生にピアノの練習時間を割いて数学の勉強をするようにいった数学教師に対し、13~14才の学生が数学の勉強が足りないと云うなら尤もなことで謹んで受けるが、数学の時間にピアノを弾くような不都合がない限り、数学教師の関知することではなく、無用の干渉はお控え願いたいと反論し、数学教師は謝って話は済んだというものです。著者は相手を怖れず信ずる所を述べてはばからない学生の態度と、面子に拘って非を固執しない教師の男らしさはこの学校のもつ特徴がよく判ると述べています。私は日本人でこのような態度を取れるかわかりませんが、日本の現状と照らしてこの学生と教師の態度、そしてこれが普通のこととされている社会に感心させられます。なお、著者が後に日本の教育者の集まりでこの話をしたところ爆笑が起こったとのことです。

小話を二つほど

広報・情報担当補佐官 増渕隆一

1.若者

「加藤登紀子も野坂昭如も井上ひさしも兼業農家だって永六輔が言ってたけど、知ってた?」
「誰ですか?それ」
「ほら、咳・声・喉に○○飴の」
「?」
「通じないか」
知りたい方は、永六輔著『畠のラジオ』をお読み下さい。

2.復命書

「この頃、出張が多いな」と思っていたら、ある日突然、総合研究部にいるのが私一人だけになってしまったことがある。いいことだし、うらやましい。
かといって、部長が置き去りにされているわけでもなさそうで、復命書を読んでいると、誰がどこに行って、何を感じてきたかが良く書き込まれていて、実に楽しい。日帰りの場合でも「○○町の今年の大豆は10a当たり65kgしか穫れませんでした」といった台風被害の速報が入る。
予算が許せば、総研部専用のレンタカーを借りてあげたいくらいである。

「営業部」キャラバン隊

体制・評価担当補佐官 折登一隆

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ペレット堆肥で栽培したネギ畑を視察するキャラバン隊(旭志村)

当センターの玄関から、液晶プロジェクターなどの機材を搭載した一台のワゴン車が出発する光景が月1回のペースで見られた。ショットガン直播の名前の載った野球帽をかぶる所長と企画調整部の九州沖縄農業研究センター「営業部」キャラバン隊の出発風景である。
営業内容は多岐にわたるが、キャラバンにはお決まりのパターンがある。まず、当センターが開発した技術の普及現場へ出かける。初対面の方が多いが、生産農家と現物を前にした対話がある。次に、会館等をお借りして当センターの研究成果などをパワーポイントで説明させていただく。
その後は意見交換会で、テーマによっては加工業者が参加される例もある。意外な話題へ展開することがある。もちろん、求められる技術が研究成果としてあれば、紹介させていただく。研究成果の認知度の低さを痛感することもある。
農家のご婦人の手作りの心のこもった昼食をいただくこともあり、望外の対応に感謝している。
5時以降に当日の対象技術に関係する研究部職員とキャラバン隊との懇親会が開催される場合がある。先ほどの営業が対外的なものであるとすれば、これは研究所内が対象の営業活動とも言える。現場に普及している自慢の研究成果に対する共通認識が醸成するのか、和やかな雰囲気で問題点も含めて話題は絶えない。
センターに帰ってから、所長から育種研究室には試験用種の提供、作業機械が必要であれば現場での実演の日程調整などキャラバンのフォローアップの指示が出される。意見交換会での発言内容にチェックが入ることもある。12月中旬のイチゴ・キャラバンまで、今年は年間9回の営業活動の予定がある。
九州沖縄農業研究センターのお客様には関連産業もある。11月16日に開催された推進会議本会議の基調講演は九州におけるフードビジネスの可能性をさぐる「フードアイランド九州の実現に向けて」であった。この分野への営業活動の場は、文字どおり「所長室」である。九州沖縄管内だけでなく、遠方から「所長室」へのお客様も多い。これが、本社の営業であるとすると、支店の営業活動の強化にも期待したいものである。(以前の記事と一部重複しますが、ご容赦ください)