九州沖縄農業研究センター

所長室から

平成17年度新人研究職員を迎えるにあたり

所長 山川 理

これからめざしてほしいこと

yamakawasinijin私は昭和44年の入省以来、技術会議に3年、あとアメリカと名古屋大学に少しいた以外はずっと九州で仕事をしてきた。だから九州のことについてはよく知っているし、尋ねられてわからないとは言えない。皆さんの場合も進み方はいろいろだ。私のように、1カ所でずっと一定の研究をやる場合もあるし、いろいろなところで異なる分野研究をする場合もある。決まった型というものはない。入ったところが必ずしも自分にフィットしない場合だってあるということだ。そういう時にも腐らないで、こういうことがやりたいと常に口に出しておいたほうがいい。一所懸命にやっていれば、やりたいと思うところに推薦することもできる。

所の方針について:マネジメントとしての3C

所長になるときに、ある人から「所長として何をやりたいか。アイデアがなければ受けない方がいい」と言われた。確かにそうだ。研究調整官からも、所の方針を出してくれと言われた。そこで1週間考えた。私は家庭で仕事の話をよくするほうだ。小さい頃から外であったことを母親によく話してきた。今回も妻にまず3C構想を話した。Cの1つはコミュニケーション。これには外向きと内向きとがある。特に内向きについて、これまで所長と職員というのは一方通行だったと思う。どうしたら双方向になるか、と考えてHPを立ち上げた。所長室のHPがあるのはうちくらいだ。従来からの所内コミュニケーションのラインは一方通行が多い。そうすると途中の過程でフィルターがかかる。都合悪いところは削られ、いいところばかりが所長に届くようになりそうだった。これが問題だ。こうならないようにしたい。そうはいっても難しいだろうから、できるだけ所員と直接コミュニケーションできる場を作るように頼んでいる。各種のヒアリングやキャラバンもその一つだ。特にキャラバンは外(現地)と内(担当者)と2つのコミュニケーションの場になっている。
次がコンペティション。一般社会では当然のことだ。大学にいるときはテストがあるし、ここに入るときにも競争があったと思うが、入ったらなくなる。私の考えは単純だ。いい仕事をした人は組織として認める、という至極当たり前のことを言っているだけだ。そのほうが公平だろう。頑張っても何もしなくても処遇は同じ、という方がよほど不公平だ。ただし、皆が認める、ということが重要だ。この一例が報償型の研究強化費だ。通常の研究強化費は良い研究企画に対し与えられる。報償型ではすばらしいことをやった、ということを皆が認めればもらえる。お金の使い方は自由だ。採点者は部長だが、そのことは逆に管理職の評価能力も試されることを意味する。また、人前で発表する、ということはプレゼン能力を高めることにもなる。
今年の3月に研究強化費の報告会をやった。皆のお金を集めて配分しているのだから皆に知る権利がある。これまでは1枚の報告書の提出で済ませてきたが、今年初めて発表会形式にした。これはコンペティションとともにコミュニケーションにもなる。これからはグループ間のコンペティションが増える。とすればコンペティション+コラボレーション(つまりCandC)とするのが適当かもしれない。
最後にクリエーションだが、研究という領域では当たり前のことだ。研究とは人がやっていないことをやるものだが、現実は後追い的なものが結構ある。こういうことをやっているのはあなただけだ、というような研究をしてほしい。
ここまで述べた3Cの中ではクリエーションがもっとも難しい。研究調整官にアクションプログラムの作成を頼んでいる。実は研究だけでなく、事務でも技術専門職でもクリエーションが必要だ。こうすれば事務処理や圃場作業がもっと効率的になる、ということを考えてほしい。トヨタの「カイゼン」みたいなものだが、職員は誰でも1人1年1提案をしてほしい。

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所の方針について:研究の方向

yotsubaここまではマネジメントの話をしたが、所の研究方向について少し話したい。研究を進めるに際しては、うちは何が強いのか、コアテクは何か、ということを常に意識し、それをもとに展開すべきだ。何でもやりますではすべての分野で競争に負ける。
うちの場合は3つのパワーと1つの目標としてコアテクを示している。品種育成、機能性とバイオマスが3つのパワー、これから目指すべきコアテクが持続型農業の基盤技術だ。3つのパワーはいずれも世界で、少なくとも日本ではトップレベルの研究を行っているものだ。また、持続型といっても幅広い。微生物もあるし、機械や天敵の活用もある。これがうちの特徴だといえるものを作りたい。

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