九州沖縄農業研究センター

所長室から

研究開発から技術の普及まで

山川 理

山川 理皆さんこんにちは。今日は大変に冷えています。でもこの会議室は空調施設が新しくなりましたので、皆さん、寒い思いをしなくて済むと思います。評価企画会議について、機構としてこれを残すかどうか今議論になっていますが、残すとすればそれなりに理由が必要になるでしょう。

私の考えでは、評価企画会議は、その名前からして「PDS」、ご存じの方も多いと思いますけれども、Plan-Do-Seeの略語、に対応したものです。「PDS」はいま企業の業務管理では当たり前の概念です。Planというのは企画、Doというのはその実行、最後のSeeというのは評価、という業務推進の仕組みです。年度初めの1回目の会議でPlanを立て、各専門別推進部会の中でDoをちゃんとやってもらって、最後に年度末の2回目の会議でSee、すなわち評価をする。このように評価企画会議にしっかりとした役割を与えることが出来れば、残すことが可能です。

まずプラニングをするわけですが、ここで重要なのはどんな研究ニーズがあるかということの把握です。研究の背景をしっかりと把握した上で、問題を解決するための手順、研究ですから仮説に基づいた手順を作っていくわけです。注意することは、その仮説なり手順はすでにどこかで提案されたり、実行されてているようなものではなくて、オリジナリティーがちゃんとあるということです。ですから第1回目の企画会議では、本当に研究ニーズがあるのかということ、そのニーズに答えるために考えている仮説とか手順にオリジナリティーがあるのかどうかということをしっかりと議論すべきです。

それから2回目は研究者がDoをした後の評価のための会議です。研究者は研究終了後にリザルトをまとめるという作業をします。しかし、私が常々言っているように、リザルトをまとめただけでは成果にはなりません。リザルトをまとめ、それがちゃんと普及するような形で再構成されたときに初めて、成果という「冠」を付けることが許されるのです。ただ結果をまとめただけでは、研究情報が出来上がっただけのことです。評価を行う場合には、得られたリザルトが本当に当初把握していたニーズにちゃんと応えるものになっているか、しかも、その答えが月並みではなく、オリジナリティーのある新しい提案になっているかしっかり検討して欲しいと思います。

研究者は、研究期間が終わったら結果をただ何となくまとめ、それを成果情報という名前で出せば仕事が終わったと思うかも知れません。それはとんでもない大間違いです。そんな身勝手はこれからは許されません。

何回も申し上げたように、ユーザーにきちんとした形で研究情報を提案し、それが受け入れられた場合に限り、初めて成果という「冠」を付けることが可能となります。このことからして、ユーザーへの提案、その後の普及という作業が極めて重要になると思います。この作業を一体誰がやるのか。私は、その結果をまとめた研究者自らが研究室から出て、ユーザーの所まで行って、しっかりサポートあるいはフォローするということが大事であると思います。その際、研究所としても研究者が活動するために必要なサポートを、予算面や人的な面で、していくことが大切です。これまでの研究・普及のリニアモデルでは、研究所は研究情報を垂れ流すだけ、後は普及の人たちが適当につまみ食いして、それでうまくいければ普及する。自分たちは、天の上から、見ているだけ。普及すればもうけもの、という体質があったのではないかと反省しています。

九州沖縄農業研究センターでは、この4月から広報普及室を、所長直結の組織として、バーチャルで立ち上げたいと思っています。機構全体でこういう体制を作るわけではありませんが。私としては各部署から必要な人員を集め、所長室の近くに広報普及室を作りたい思います。そして私どもの研究所が開発した技術をしっかりとPRするとともに、普及にまでしっかりと繋げたいと考えています。もちろん普及まで繋げるとなると、九州沖縄農業研究センターだけの力ではとても出来る話ではありません。今日お集まりの各県の方や民間企業の方々としっかりと手を繋いでやっていきたいと思います。

これまでのように九州沖縄農業研究センターが基盤技術を作り、それを県の方が普及技術に仕上げるというリニアモデルとは様相が異なってくると思います。現場に普及するにあたっては当然各県の方々と真摯なディスカッションが必要な場面もあると思います。私どもは労をいとわず現場に出向き、しっかりと説明をしていきたいと思います。少し長くなりましたが、これで開催の挨拶と致します。

(九州沖縄農業試験研究推進会議 平成17年度第2回評価企画会議での所長挨拶から)