九州沖縄農業研究センター

所長室から

就任挨拶

九州沖縄農業研究センター所長 岡本 正弘

岡本 正弘  農業の技術開発を巡る状況が大きく変わろうとしています。
  昨年10月「大日本農会」の熊本支会発足の記念シンポジウムが熊本市内でありました。シンポジウムでは冒頭に、東京農工大学の澁澤先生の記念講演がありました。この中で先生は、「昨年6月に閣議決定された科学技術イノベーション総合戦略では、農業が5本柱の1つに挙げられている。閣議で農業の技術開発を国家事業として進めることとしたのは戦後初めてであり、そのぐらいの大きな変化が政府の中にある」と発言されていました。
  農業技術に対する政府の期待の具体的な表れとして、平成25年度の補正予算「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業」(「緊急展開事業」)があります。この事業は、政府の「攻めの農林水産業」施策実現のため、1新品種や新技術による強みのある農畜産物づくり、2大規模経営での省力・低コスト生産体系の確立、3異分野の先端技術の活用などにより、従来の限界を打破する生産体系への転換を目指すものです。
  この「緊急展開事業」により、九州沖縄農業研究センターは、水田作、畑作、畜産、サトウキビの4つの分野で、県や民間等とコンソーシアムを作り、10年後を見据えた革新的な生産体系を実証することとなりました。 ここで取り組むそれぞれの生産体系には、九州沖縄農業研究センターがこの5年10年と暖めてきた数々のキーテクがキラ星のように盛り込まれています。
  具体的には、極多収の大麦新品種「はるか二条」、直播水稲の苗立ちを安定させる「べんがらモリブデン」(以上、水田作・園芸研究領域(筑後))、飼料自給率向上に期待が大きい「TMR(混合飼料)」(畜産草地研究領域(合志))、サツマイモ栽培の軽労化・大規模化を実現する「小苗移植栽培」(畑作研究領域(都城))、サトウキビの安定生産性を飛躍的に高める「高バイオマス量サトウキビ品種」(作物開発・利用研究領域(種子島試験地))等、枚挙に暇がありません。この実証事業には、当センターのこれらの分野(研究領域)のここ5年10年の歩みが凝縮されていると言っても過言ではありません。
  農業の技術開発に対する多くの期待に応えるため、九州沖縄農業研究センターでは研究職員、技術専門職員、一般職員が一体となって本事業に取り組む所存です。ここで実証される数々の革新的技術が九州・沖縄地域の農業や地域社会に明るい明日をもたらすよう願ってやみません。。