要約
サツマイモ苗の活着安定技術として、現地で普及しているサツマイモ挿苗機にも装着可能な植付同時かん水装置を開発した。開発機により、晴天が続く条件下で挿苗した苗においても苗傷みが少なく活着率は高く、作業可能面積は約2倍に拡大される。
- キーワード: サツマイモ、挿苗機、かん水、活着安定
- 担当: 鹿児島県農総センター・大隅支場・農機研究室
- 代表連絡先: Tel:0994-62-2001
- 区分: 九州沖縄農業・畑作
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
サツマイモの活着は挿病後の気象条件に左右され、品質・収量が安定しない等の問題があり、植付作業は、朝夕、曇天、降雨前、小雨中などの短期間に植付作業を行う必要がある。一方、挿苗作業の機械化が遅れていたが、近年斜め植えや船底植えが可能な挿苗機が開発・実用化され、現在、県内で約250台が普及・稼働している。この挿苗機に対応した活着安定技術を開発し、サツマイモの収量・品質向上と作付面積の拡大を図る。
成果の内容・特徴
- 開発機は、船底植仕様サツマイモ挿苗機にピストンポンプを装備し、ポリタンクから吸水して植付爪先端から吐出、かん水する機構である。ピストンポンプは、植付伝動ケースから動力を取り植付爪動作に連動し、ポンプ駆動用取付ピンの組み付け位相を変更することで、かん水のタイミングと水量を設定することができる。かん水量は、23cc/本(750本程度/18Lポリ缶)が適し、サツマイモ苗の挿苗と同時に、苗周囲にかん水を行う(図1、図2)。
- 晴天が続く条件下での慣行(かん水無し)の活着率は90%前後であるが、植付と同時にかん水することにより97%以上に向上し、欠株補植の必要もない。また、挿苗後の苗傷みが少なくて発根が早いことから、初期生育は良好で、上いも収量、個数が増加する傾向がある(表1)。
- 植付同時かん水を行うことにより晴天時の挿苗が可能となることから、サツマイモ挿苗機の作業可能面積は、青果用サツマイモで14.7ha、加工用サツマイモで16.4ha、でん粉用サツマイモで20haと約2倍に拡大される(表2)。
成果の活用面・留意点
- 活着安定を図るための苗の取り置きは、3~4月で4~5日、5~6月で2~3日が最適である。
- 植付同時かん水であっても、畦立は土壌水分の適度にある時に行う。
- サツマイモの計画的生産とサツマイモ挿苗機の効率利用が図れる。
- かん水装置は、部品として挿苗機メーカから市販・取付作業が実施される。
具体的データ
その他
- 研究課題名: サツマイモの機械植付のための省力育苗採苗、活着安定技術の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2004~2008年度