九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

多収で紫肉色の安定した加工用カンショ新品種候補系統「沖育96-1-15」

要約

「沖育96-1-15」は、いもの変形が少なく外観の良い多収系統である。紫肉色が濃く均一で安定しているため、加熱後の発色が良く加工用に適している。

  • キーワード: サツマイモ、紫肉色、沖育96-1-15、多収、加工用
  • 担当: 沖縄県農業研究センター・作物班
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8500
  • 区分: 九州沖縄農業・畑作
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

沖縄県においては、紅いもで親しまれているアントシアニン系統のカンショの需要が多く、特に紅いもを原料とした菓子類はお土産として人気がある。現在、アントシアニン系統の奨励品種は4種ほどで、その中で「備瀬」と「宮農36号」は栽培条件により肉色が薄くなる性質があり、年間をとおして安定供給が求められている紅いもにおいて問題となっている。そこで、アントシアニン系で肉色の安定した多収の品種を育成し、加工原料用紅いもの安定生産供給を図る。

成果の内容・特徴

  • 「沖育96-1-15」は「備瀬]を種子親とし放任受粉により育成した系統である。
  • 「備瀬」や「宮農36号」では、肉色が薄くなることがあるが、「沖育96-1-15」は紫から濃紫色で安定している(表1、図1、表2)。
  • 外観が良く、変形が少ないため、AB品の割合が多い(表1、図2、表2)。
  • 春~夏植え(5~6月植)の収量は、年次変動はあるものの200kg/a以上と安定多収のため、5年間の平均単収は322kg/aで、「備瀬」に比べて1.9倍の高い収量性を示している(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 肉色が濃く甘味が少ないので焦げにくく、加熱後の発色が良いためチップスやペーストのなど加工に適している。
  • 栽培条件によって肉質が変化する場合がある。
  • 水田における栽培(2004~2006年度)でも収量が比較的多く、水稲との田畑輪作が期待できる。
  • 普及見込み地域は、沖縄本島中北部を中心とする紅いも生産地である。

具体的データ

表1  

図1

図2

表2 

その他

  • 研究課題名: カンショの新品種育成
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 1996~2007年度