要約
粗砕石灰岩利用による酸度矯正は炭カルに比べて持続性が高く、資材コストも低い。また、酸度矯正しない場合に比べてサトウキビは増収傾向にある。
- キーワード: 粗砕石灰岩、酸度矯正、サトウキビ、国頭マージ、大東マージ
- 担当: 沖縄農研セ・土壌環境班
- 代表連絡先: Tel:098-840-8503
- 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
県内には酸性土壌が広く分布しており、サトウキビ等作物生産の妨げとなっている。そのため、営農段階ばかりでなく土地改良事業においても、低コストで持続性の高い酸度矯正技術が求められている。一方、生産現場においては、県内に豊富に産出する粗砕石灰岩を用いた酸度矯正が行われているが、投入適正量や持続性、資材コスト等が明確でない現状にある。そこで、粗砕石灰岩による低コストで持続性が高い酸度矯正技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 炭カルの粒径分布はすべて0.105mm以下であるが、石灰岩を砕いて10mm以下のふるいを通した粗砕石灰岩には0.105mm以下のパウダー状の粒子から10mm以下の粒状の粒子まで、様々な粒径の粒子が含まれる(表1)。また、1mm以下の粒子は重量として約30%含まれる。アルカリ分は炭カルと同等である。
- 粗砕石灰岩は炭カルと同量の投入量では、十分な酸度矯正効果を得られない(図1)。しかし、炭カルは速効的であるが、酸度矯正効果は徐々に低下する。粗砕石灰岩を炭カルより多量に投入して酸度矯正した場合、初期の効果は炭カルにやや劣るが、その後pHは上昇し、少なくとも投入約2.5年後まで酸度矯正効果は持続する。
- サトウキビは粗砕石灰岩で酸度矯正した場合、酸度矯正しない場合に比べて増収傾向にある(表2)。炭カルと比べると、同等かそれ以上の効果がある。
- 中和緩衝曲線法によって求めた国頭マージおよび大東マージ(南北大東島に分布する酸性土壌)をpH6.0に酸度矯正するのに必要な粗砕石灰岩量は、原土pHが4.0の時にはそれぞれ2500kg、3200kg/10aであり、大東マージの方が多い(表3)。
- 国頭マージ(pH4.0)をpH6.0に酸度矯正する場合に必要な資材コストは、炭カルに比べて粗砕石灰岩は約1/8である(表4)。
成果の活用面・留意点
- 国頭マージ及び大東マージに適用する。
- 粗砕石灰岩は酸度矯正効果の持続性が高いため、将来酸性を好む作物を栽培する可能性がある場合には使用を避ける。
- 粗砕石灰岩は、粒径1mm以下の粒子が約30%配合されており最大粒径が10mm以下で、特殊肥料としての届出があるものを用いる。
- 粗砕石灰岩の投入量は、事前に対象土壌のpH(原土pH)を測定し、表3から投入量を算定する。また、表3は改良深25cmの場合であり、改良深に合わせて投入量を増減する。投入上限値は3.2t/10aとする。
- 粗砕石灰岩の投入はサトウキビ植付け2週間前までに行うことが望ましい。ライムソワーやダンプ、ユンボ、マニュアスプレッダー等で散布し、ロータリーで混合する。
具体的データ
(宮丸 直子)
その他
- 研究課題名: 石灰岩砕石による酸度矯正が土壌化学性・生物性に及ぼす影響
- 予算区分: その他(沖縄振興特別調整費)
- 研究期間: 2008~2009年度
- 研究担当者: 宮丸 直子、儀間 靖