九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

水田のケイ酸供給能に基づく水稲に対するケイ酸質資材施用の要否判定

要約

土壌中の可給態ケイ酸含量が15mg/100g乾土未満である球磨川水系の非黒ボク土水田ではケイ酸供給能が小さいため、ケイ酸苦土石灰の100~200kg/10a施用によって水稲は増収する。菊池川~緑川水系や黒ボク土水田ではケイ酸供給能が中~大であるため、施用効果は小さい。

  • キーワード: 水田、水稲、可給態ケイ酸、灌漑水
  • 担当: 熊本農研セ・生産環境研・土壌肥料研究室
  • 代表連絡先: Tel:096-248-6447
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 技術・参考

背景・ねらい

土づくりのための土壌改良資材の積極的な施用が叫ばれる中、一方では画一的な資材施用による資材コストの上昇や養分が過剰に集積する場面も見受けられる。そこで、水田に対する土づくり資材として重要なケイ酸質資材の適正施用を図るため、水稲栽培におけるケイ酸質資材の施用の要否判定基準を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 熊本県内水田の灌漑水のケイ酸濃度は、27mg/L以上の菊池川や緑川水系と、10~12mg/Lの球磨川水系に分けられる。土壌タイプが同じでも、灌漑水のケイ酸濃度の高い水系では土壌中の可給態ケイ酸含量が高い(表1)。
  • 水田のケイ酸供給能は、灌漑水中ケイ酸濃度と土壌タイプによって区分される。土壌中の可給態ケイ酸含量が15mg/100g乾土未満である球磨川水系の非黒ボク土水田では小であり、15mg/100g乾土以上である菊池川~緑川水系あるいは黒ボク土水田では中~大である(図1、表1)。
  • ケイ酸供給能が小の水田では、ケイ酸苦土石灰の100~200kg/10a施用によって水稲は増収する。しかし、ケイ酸供給能が中~大の水田では、ケイ酸苦土石灰施用による収量増加は見られずケイ酸質資材の施用効果は小さい(表2)。

成果の活用面・留意点

  • ケイ酸供給能マップはデジタル土壌図を地理情報システム(GIS)により作成できる。GISソフトによる閲覧または印刷物による配布が可能である。
  • 土壌の可給態ケイ酸含量は、20mM中性リン酸緩衝液抽出法(40°C、5時間)で測定した。
  • ケイ酸質資材の要否判定に基づくことにより、資材の効果的な施用が可能となる。

具体的データ

図1

表1

表2 

その他

  • 研究課題名: 環境規範に基づく主要作物に対する施肥基準の改定
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2006~2008年