九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

外観品質が優れるビール大麦「サチホゴールデン」の佐賀県における特性

要約

「サチホゴールデン」は「ほうしゅん」と比較して出穂・成熟期が1~2日早く、稈長が4~7cm短く、耐倒伏性は優れる。オオムギ縞萎縮病ウイルスのI~III型系統に抵抗性を示し、大粒、多収で、外観品質は安定して優れ、麦芽品質は「ほうしゅん」よりやや劣る。

  • キーワード: ビール大麦、大粒、多収、外観品質、醸造適性
  • 担当: 佐賀県農業セ・バイテク部・作物育種研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作
  • 分類: 技術・普及 

背景・ねらい

本県の麦作は20,100ha(平成20年産)で、そのうち大麦が44%作付を占める。大麦の64%はビール醸造用であり、その中で「ほうしゅん」が37%を占めている。「ほうしゅん」は早生でビール醸造適性が高く、多収であるが、穀皮が薄いことによる剥皮粒発生、雨害による品質低下が問題である。さらに、ビール大麦は“品目横断的経営安定対策”の対象とならないことから、ビール原料としての品質規格を安定して満たしうる品種が求められている。そこで、外観品質が安定して良く、多収で麦芽品質が優れるビール大麦「サチホゴールデン」の佐賀県における適応性を検討し、その特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

サチホゴールデン」は栃木県農業試験場栃木分場(指定試験地)において、「大系R4224」と「関東二条29号」の交配より育成されたもので、その特性は「ほうしゅん」と比較すると以下のとおりである。

  • 出穂期は2日、成熟期は1~2日早い早生種である(表1)。
  • 稈長は4~7cm短く、穂長は0.5cm長い。穂数は同程度かやや少ない(表1)。
  • 耐倒伏性は優れる(表1)。
  • うどんこ病、赤かび病は同等に強く、オオムギ縞萎縮病ウイルスのI~III型系統に抵抗性を有する(表1、表2)。
  • 千粒重は重く、整粒歩合は同等かやや高く、収量性は高い(表1)。
  • 外観品質は安定して良い(表1、図1)。
  • 麦芽エキス、エキス収量が高い。可溶性窒素、コールバッハ数がやや高いため麦芽品質はやや劣るが、「あまぎ二条」より優れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 平成20年播きより奨励品種として「ほうしゅん」のほとんどと「あまぎ二条」の一部に替えて2,800ha作付けの予定である。
  • 側面裂皮粒が発生しやすいので、極端な早播きは避け、湿害対策に努める。
  • 整粒歩合向上とタンパク含有率が10~11%を厳守するため、適正な施肥に努める。

具体的データ

表1 

図1 

表2

表3

 

 その他

  • 研究課題名: ビール大麦合同比較試験
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2000~2007年度