九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

極晩生の飼料用イネ新品種「タチアオバ」を中心とした周年多収な作付体系

要約

「タチアオバ」はホールクロップ向けの極晩生品種であり、乾物収量、可消化養分総量収量および耐倒伏性が優れている。また、栽植密度を低くした疎植でも多収であり、後作にイタリアンライグラス等を組み合わせた周年作付体系では約3t/10aの乾物収量が得られる。

  • キーワード: 飼料用イネ、極晩生、周年作付体系、タチアオバ、疎稙
  • 担当: 福岡農総試・畜産環境部・飼料チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5177
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

国際的な飼料原料価格が高騰する中、畜産経営の安定のため水田有効活用による自給飼料増産が重要となり、飼料用イネが注目されている。このため、温暖多雨な本県の気候風土に適した飼料用イネ新品種選定や栽培技術改善、周年作付体系等を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「タチアオバ」は、出穂期が9月中旬、収穫適期が10月下旬となるホールクロップ向けの極晩生品種で、乾物収量および可消化養分総量収量(以下TDN収量)が多い。また、従来の飼料用イネ品種「ニシアオバ」と比較して倒伏には極めて強い(表1)。
  • 「タチアオバ」の後作にイタリアンライグラスまたはえん麦を組み合わせた周年作付体系により、約3t/10aの乾物収量が得られる(図1)。「タチアオバ」の施肥は牛ふん堆肥主体とし、6月中旬に移植、7月下旬からの中干し後から間断灌水し、落水を10月上旬に行う(図1)。
  • 「タチアオバ」は栽植密度を下げた疎植の場合でも慣行と同等の乾物収量およびTDN収量が得られる(表2)。さらに、移植機に疎植機能がない場合は、一株苗数の設定を2~3本に調整することにより、疎植と同等の収量ならびに必要苗箱数を約40%削減できる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 台風の上陸が多い九州の気候条件に適した極晩生のホールクロップ向けの飼料用イネとして福岡県飼料作物奨励品種に採用した(2009年5月1日県公報発表)。

具体的データ

表1

図1

表2

表3

(柿原 孝彦・手島 信貴)

その他

  • 研究課題名: 飼料用イネを中心とした栽培・収穫体系の確立
  • 予算区分: 委託プロ(えさプロ4系)
  • 研究期間: 2006~2009年
  • 研究担当者: 柿原 孝彦、手島 信貴、中村 由佳里、平川 達也、棟加登 きみ子、佐藤 健次(九州沖縄農研)