要約
MAP反応を利用した豚舎汚水からのリン除去・回収技術において、通気量を増加した250Lの小容量MAPリアクターを用いることで、曝気効率が向上し、リン除去および回収量が顕著に増加する。
- キーワード: MAPリアクター、曝気効率、小容量化、曝気量増加
- 担当: 佐賀畜試・中小家畜部・畜産環境・飼料研究担当
- 代表連絡先: Tel:0954-45-2030
- 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜・畜産環境)
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
リン酸の結晶化反応であるMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)反応を利用した豚舎汚水からのリン除去・回収技術において、既存の汚水槽の一部を仕切り1.8~2.4m3のMAP反応槽として1m3/m3・時で曝気する条件下において、回収部材の陶器部材を供試前に30%MgCl2・6H2O液に浸漬処理することで、MAP回収量が多くなることが確認されたが、実用化のためには、さらにMAP反応を誘導させて、効率的なリン除去・回収技術を確立する必要がある。
そこで、曝気効率の向上によるMAP反応の効率化を図るため、通気条件を改善した250Lの小容量のMAPリアクターを用いてリン除去回収試験を行い、既存標準活性汚泥処理施設への適用を試みる。
成果の内容・特徴
- 散気管を3基設置した有効容積250LのMAPリアクター(ステンレス製:直径500mm×高さ2,000mm)は、30%MgCl2・6H2O液に浸漬処理した陶器部材24本、部材容器およびMgタンクを含めて150万円程度(母豚100頭一貫規模)で設置できる(図1)。
- 試験期間中の家畜尿汚水中成分について、MAPリアクター内で全リンおよび水溶性リンの約90%が除去される(表1)。
- MAP反応における曝気量を既存成果での1m3/m3・時(MAP反応槽1.8~2.4m3)から45m3/m3・時に増加させることにより、曝気効率が向上して既存成果の約5倍程度のMAP回収効率が得られる(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本装置は汚水処理施設を設置している畜産農家において可能である。また、250Lの小容量であるため、既存施設の空きスペースに設置できる。
- 本装置は汚水の原水について、固液分離および凝集剤添加による機械分離処理を行っている農家を想定している。
- 原水中の汚水性状は年間を通じて変動し、さらに脱水機による機械分離工程でpHが上昇しMAP反応に必要となる水溶性PO4-Pが減少する場合がある。
- 年間を通じて安定したMAP回収効率を図るために、原水の固液分離技術および脱水濾過液のpH制ご技術等の確立が必要となる。
具体的データ
(脇屋 裕一郎)
その他
- 研究課題名: MAP法による脱水濾過液のリン除去・回収技術の開発
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2009年度
- 研究担当者: 脇屋 裕一郎、河原 弘文、石田 稔、内田 敏博(戸上電機)、古田 祥知子、関戸 正信(佐賀窯技)、川村 英輔(神奈川農技)、鈴木 一好(畜草研)
- 発表論文等: 脇屋ら(2010)日本養豚学会誌、47(4):187-197