要約
経腟採卵においてウシの年齢による影響は、15歳以上では有意に回収卵子数の減少を招き、10歳以上で卵子の卵丘細胞の付着が少なくなる。また、卵丘細胞が全く付着していない裸化卵子のみからも体外胚および産子は作出できる。
- キーワード: 経腟採卵、卵子、卵丘細胞、体外胚、ウシ、年齢
- 担当: 鹿児島肉改研・新技術開発研究室担当
- 代表連絡先: Tel:099-482-2552
- 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
種雄牛造成等の家畜の改良を行う場合においては、高育種価の雌牛を選抜し、いくつかの交配種雄牛を決定した後に、人工授精または一部採卵による胚移植によって素牛を生産する手法が実施されている。
しかし、高能力雌牛の高齢化は少なくなく、過剰排卵処置による採卵方法には限界がある一方で、経腟採卵(OPU)技術の活用により高齢牛をはじめ育成子牛、妊娠牛、繁殖障害牛等を含む雌牛から多くの卵子を採取する体系が確立しつつある。その際の卵子は様々な形態で採取され、胚盤胞への発生率や産子作出に大きな影響を与える。
そこで、黒毛和種繁殖雌牛において採取した卵子の形態には年齢による差異があるのかを調査し、さらに裸化卵子のみからの胚および産子作出を試みる。
成果の内容・特徴
- OPUにおいてウシの年齢による影響は、体外受精成績には認められないが、回収卵子数で15歳以上では有意に減少し、卵子の形態については10歳以上で成熟培養の促進や多精子受精を防ぐとされる卵丘細胞の付着が少なくなる(表1、表2)。
- OPUの採取頭数のうち、回収された全ての卵子(5個以下)で卵丘細胞が全く付着していない裸化卵子(G4)のみを成熟培養して体外受精をすることで、体外胚および産子作出が可能である(表3)。
成果の活用面・留意点
- ウシ年齢(高能力雌牛の高齢化等)毎のOPU卵子形態に違いは認められるが、胚盤胞発生率に影響はない。
具体的データ
(磯部 知弘)
その他
- 研究課題名: 受精卵移植と遺伝子診断技術の融合による優良種雄牛候補の作出
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2006~2010年度
- 研究担当者: 磯部 知弘