要約
有機畜産物JAS規格に準拠した飼育条件では肉用鶏の発育が低下するが、コクシジウムワクチンの投与により慣行飼育と同等の発育成績を得ることができる。
- キーワード: 肉用鶏、有機畜産物JAS、コクシジウムワクチン
- 担当: 福岡農総試・家畜部・家きんチーム,畜産環境部・環境衛生チーム
- 代表連絡先: Tel:092-925-5232
- 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(家畜)
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
2005年度の有機畜産物JAS規格の施行に伴い、有機鶏肉の生産を目指す動きが活発化している。規格では、認定済み有機飼料の給与が義務付けられているほか、10羽当たり1m2の床面積に加えて同面積の野外運動場を付設すること、飼育全期間にわたって予防目的の抗菌剤投与を禁止することが定められている。しかし、野外運動場付き・抗菌剤無添加の飼育条件(以下「有機型飼育」)では、コクシジウムの常在化により、慢性的な産肉成績の悪化が懸念される。
そこで、飼料は非有機の通常品を用い、運動場を付設し抗菌剤無添加とした有機型飼育での肉用鶏の発育状況ならびにストレス指標とコクシジウムオーシスト数の動態を明らかにし、産肉成績を高めるための飼育方法の確立を図る。
成果の内容・特徴
- 有機型飼育では、生菌混合飼料および有機酸を添加しても、体重、飼料要求率および育成率は慣行型よりも有意に低下し(表1)、オーシスト数にも変化は認められない。
- 有機型飼育において、餌付け時にコクシジウムワクチン(Scherig-Plough社製Paracox-5、6500円/1000羽分)を投与すると、糞中コクシジウムオーシスト数の増加は抑制され、ストレス指標となる偽好酸球/リンパ球比は有意に低い値を示し、飼料要求率が有意に向上し、慣行飼育と同等の産肉成績が得られる(表2、表3)。
成果の活用面・留意点
- 有機肉用鶏生産のための技術資料として活用する。また有機採卵養鶏や動物福祉型養鶏を実施する際の資料として利用する。
- 野外運動場は、飼養年数経過時はコクシジウム感染予防のための石灰消毒が必要である。また鳥インフルエンザ対策として防鳥網の使用が不可欠である。
具体的データ
その他
- 研究課題名: 有機畜産物JASに適合する地域特産鶏飼育技術の確立
- 予算区分: 17年県単事業(ふくおかのひと味違う畜産物推進)、18~19年経常
- 研究期間: 平成19年度(平成17~19年)