九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

汎用型飼料収穫機のサイレージ発酵品質と作業可能面積および損益分岐点

要約

トウモロコシ・ソルガム混播および飼料用稲を対象とした汎用型飼料収穫機は、発酵品質が優れたサイレージを生産することができる。また、収穫期間中の作業可能面積は、それぞれ36ha(延べ72ha)、38haであり、損益分岐点は、9.3ha、10.8haである。

  • キーワード:汎用型飼料収穫機、サイレージ発酵品質、作業可能面積、損益分岐点
  • 担当:福岡農総試・畜産環境部・飼料チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-925-5177
  • 区分:九州沖縄農業・畜産・草地(草地飼料作)
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

生物系特定産業技術研究支援センター(以下、生研センター)で開発された汎用型飼料収穫機(以下、汎用機)は、収穫部アタッチメントの交換により複数の飼料作物に対応可能で、収穫・細断した材料草をロールベール成形でき、クローラ・自走型で軟弱地盤に強いため水田を活用した飼料自給率向上に大きく貢献できると期待される。
そこで、汎用機の導入利用計画に必要なデータを得るため、現地実証試験を行い、生産されたサイレージの発酵品質を評価するとともに、作業可能面積および損益分岐点を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 汎用機によって収穫・調製されたラップサイレージの乾物密度は、約200kg/m3と高く発酵品質は非常に優れている。さらに、長期間保存しても品質の低下は少ない(表1)。
  • 試験地における汎用機の一日作業可能面積は、トウモロコシ・ソルガム混播では2.0ha/日、飼料用稲では1.2ha/日であり、収穫期間中の作業可能面積は、それぞれ36ha(延べ72ha)および38haである(表2)。
  • 畜産農家数戸共同での自家利用飼料生産場面を想定し、現地試験成績を基に汎用機の収益性を試算すると、トウモロコシ・ソルガム混播では、固定費は5,951千円、変動費は311千円/haであり、生産物評価額が950千円/haの場合、損益分岐点は9.3ha、8,847千円である(図1)。
  • 飼料用稲では、栽培経費は耕種農家側が負担し、畜産農家側は収穫経費のみの負担としてトウモロコシ・ソルガム混播と同様に試算すると、固定費は3,657千円、変動費は67千円/haであり、生産物評価額が405千円/haの場合、損益分岐点は10.8ha、4,382千円である(図略)。

成果の活用面・留意点

  • 飼料生産組合およびコントラクター組織を対象とした汎用機導入利用計画の基礎資料として活用できる。
  • コントラクター組織等が畜産農家に生産物をより安価で販売する場合や、作業能率の低下により一日作業可能面積が減少する場合は、損益分岐点は上昇する。

具体的データ

表1

表2

図1

その他

  • 研究課題名:省力高品質細断サイレージ収穫作業の体系
  • 予算区分:委託プロ(次世代緊プロ)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:柿原孝彦、平川達也、中村由佳里、棟加登きみ子、徳満茂、志藤博克(生研センター)、橘保宏(生研センター)、川出哲生(生研センター)