九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

減肥下での一番茶芽出し肥への有機液肥使用による収量・品質の保持

要約

一番茶芽出し肥として、乗用型防除機を活用して有機液肥を雨落部に散布することで、減肥下においても一番茶収量および品質を保持することができる。

  • キーワード:チャ、減肥、有機液肥、芽出し肥、収量、品質、乗用型防除機
  • 担当:長崎農技セ・茶業研究室
  • 代表連絡先: Tel:0957-46-0033
  • 区分:九州沖縄農業・茶業
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

茶の減肥栽培が進む中、より肥効を高め収量・品質を確保する上で液肥の施用は有効な手段である。しかし、液肥の点滴施用は配管施設の整備等の新たな投資が必要であり普及が進んでいない。また、茶樹ではアミノ酸態窒素の吸収が有効なことが水耕栽培において明らかにされている。そこで、軽作業化を図るために乗用型防除機を活用し、減肥下での一番茶芽出し肥にのみ有機液肥を用いる効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 減肥下(N-45kg/10a)であっても慣行施肥(N-55kg/10a、芽出し肥:硫安)と比べて芽出し肥に有機液肥を施用することで一番茶収量は同等に推移し、減肥下で芽出し肥に硫安を施用するより生育が優れる(図1)。
  • 一番茶は芽出し肥に有機液肥を施用することで、慣行施肥と比べて同等の全窒素含量を保持できる(図2)。
  • 一番茶の目標収量である650kg/10aに達した時の出開度は慣行施肥より低く、荒茶品質は保持できる(表1)。
  • 液肥の施用は茶乗用型防除機に自作の散布用アタッチメントを装着し、加圧して雨落部に散布し、10aあたり3,000リットルを1~1.5時間で行うことができる(写真1)。

成果の活用面・留意点

  • 試験は、茶業研究室内圃場で実施した(やぶきた、無被覆栽培、樹齢32~34年生、玄武岩細粒質黄色土)。
  • 慣行施肥(年間窒素施用量55kg/10a)に対し、年間窒素施用量45kg/10aで実施し、芽出肥として年間窒素量の10%を施用した結果である。
  • 施肥は年間窒素施用量に対して、春肥:30%(2回分施)、芽出し肥:10%、追肥 I :15%、追肥 II :15%、秋肥:30%(2回分施)、計7回に分施し、春肥及び秋肥は有機配合肥料、追肥に硫安を使用した。
  • 液肥は市販の有機液肥(N:P:K:Mg=10:5:6:1)を使用し、芽出し肥として一番茶萌芽期に、10aあたり窒素量4.5kgを3,000リットルに希釈して散布する。
  • 年間の肥料費は、年間窒素施用量を削減することで、有機液肥による増加分を相殺でき、慣行とほぼ同等の53,400円程度である。

具体的データ

  図1

図2

表1

写真1

その他

  • 研究課題名:飲む人・作る人に安心な茶生産技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:野田政之、山口泰弘
  • 発表論文等:ながさき普及技術情報第28号(2008年度)