要約
中山間地域でのイチゴ「さがほのか」の高設栽培において、7月に定植した株は、熱線遮断フィルム被覆と、平均18°C程度の冷水を用いたクラウン部冷却を行うと、第1次腋果房の花芽分化が促進される。
- キーワード: イチゴ、さがほのか、熱線遮断フィルム、クラウン部冷却、年内収穫
- 担当: 佐賀農業セ・三瀬分場・山間畑作研究担当
- 代表連絡先: Tel:0952-56-2040
- 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
山間地における夏季冷涼な気象条件を活かし、年内収量を確保する夏秋どりイチゴの栽培体系を開発する。これまでに「さがほのか」の高設栽培において、7月に定植した株は、日長12時間の短日処理と平均18°C程度の冷水を用いたクラウン部冷却を行うと、出蕾が早くなり年内収量が多くなることを明らかにした。しかし、短日処理は被覆シートの開閉の労力を要するので、省力的な第1次腋果房の花芽分化促進をめざして、熱線遮断フィルム被覆による花芽分化早進効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
- 熱線遮断フィルムのトンネル被覆では、草高が低くなり生育にやや影響があるが、被覆除去後は回復する(表1)。
- 第1次腋果房の花芽分化は、クラウン部冷却に熱線遮断フィルム被覆を加えることでクラウン部冷却のみに比べ進む(表2)。
- 第1次腋果房の出蕾は、基肥量の多少で効果に差があるがクラウン部冷却に熱線遮断フィルム被覆を加えることにより、ばらつきが少なく早くなる(表3)。
成果の活用面・留意点
- 中山間地域(標高400m以上)における早出し栽培に活用できる。
- 熱線遮断フィルムは、赤色光(R)と遠赤色光(FR)のR/FR値2.0のフィルムをトンネル状に被覆した。
- 苗は5月上旬から5月下旬に採苗し、7月8日、間口6mの雨よけハウス(天井部遮光率50%遮光ネット被覆)内の高設栽培槽に定植した。2010年は、6月1日~7月7日まで熱線遮断フィルムで被覆し、頂果房の花芽分化を促進した苗を定植した。
- 基肥は、2009年では成分量で株当りN=1.4g、P2O5=0.7g、K2O=0.7g、2010年では花芽分化の影響を抑えるため減肥して成分量で株当りN=0.7g、P2O5=0.35g、K2O=0.35g施用し、追肥は適宜液肥で施用した。
- クラウン部冷却は、19mm鉄管に18°C程度の冷水を通水し、鉄管の表面温度を平均17~21°C程度に制御した。
- 今回使用した熱線遮断フィルムは、ミツバチの飛行に影響があるので、本圃で使用する場合はトンネル被覆するかマルハナバチを利用する。
具体的データ
(佐賀県農業試験研究センター)
その他
- 研究課題名: 地球温暖化における夏秋期高温環境が本県主要野菜花きに及ぼす影響と対策技術の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2009~2010年度
- 研究担当者: 中島 正明、江頭 淳二