生物系特定産業技術研究支援センター

《こぼれ話4》陸上養殖のサクラマスをブランド品へ

2020年4月15日号

日本最高級の陸上養殖ブランド魚

陸上養殖施設で飼育された山形県の県魚「サクラマス」を日本最高級のブランドサーモンに育てて、海外にも輸出したい―そんな夢を担ったサクラマスの陸上養殖が山形県遊佐町 (ゆざまち) で行われています。山形県の新しい地場産業の誕生への期待も高まっています。

ゼロエミッションを目指し、海水を循環・ろ過

日本海に面した遊佐町吹浦に巨大なテント型の陸上養殖試験施設 (約450平方メートル) があります (写真1) 。その中に円形の大型水槽 (容量は5t。直径約2.5m、深さ約1m) が2基あり、まばゆい銀白色に輝くサクラマスが元気よく泳いでいます。

マルハニチロ株式会社、山形県農林水産部、株式会社キッツ、水産研究・教育機構など産官学7機関が取り組むサクラマスの陸上養殖試験です。

2基の水槽には、卵からふ化して1年半たったサクラマス約180尾 (体長40~50cm、体重1.4kg前後) が勢いよく遊泳しています。5月にも2kgサイズで水揚げされる予定です。

飼育試験は2017年9月から始まりました。施設内には飼育用海水を再利用するために濾過槽、紫外線殺菌装置、サクラマスを飼育するための水槽などが設置され、飼育用海水を循環させるパイプが縦横に張り巡らされています。閉鎖循環式陸上養殖と呼ばれ、水温や溶存酸素量などはセンサーを用いて自動管理され、スマートフォンなどを用いてどこからでも飼育水槽をモニタリングできます。餌はサケ科魚類専用の配合飼料を用いていますが、地場ブランドの特色作りのため、山形特産の酒かすやサクランボを混ぜて与えることも考えています。無駄な餌が発生しないよう自動給餌器で一定の間隔で与えられ、廃棄物の発生を極力抑えたゼロエミッション型の閉鎖循環式陸上養殖施設を目指しています。

写真1 出荷サイズのサクラマス
写真2 シンガポールの高級日本料理店で
試供されたサクラマス料理

(写真1、2ともマルハニチロ株式会社提供)

シンガポールへ空輸

これまでに水揚げされたサクラマス (写真1) は国内外で試食会が行われています。刺身、素焼き、煮つけなど幅広く料理でき、天然ものに引けを取らない評価を得ています。2019年5月に水揚げされたサクラマスは、シンガポールの高級料理店へ空輸で運ばれ、日本、イタリア、フランスの各料理店 (写真2) で試食されました。味はよい評価でしたが、「もう少し大きな魚体がほしい」「価格が高い」などの課題も浮かびました。

今後、輸出競争力をもったサクラマス養殖にしていくには、安価で高性能な飼育設備の開発や電気代の削減とともに、高い飼育密度でできるだけ大きな魚体を育てることが必要など、さらなる経済的な採算向上が求められています。

持続可能な養殖業を示すASC認証

このサクラマスは、水産エコラベルのひとつで環境によい養殖を意味する「ASC認証」を今年3月に取得しました。陸上養殖のサケマス類では日本初の認証となります。

ASC (水産養殖管理協議会) は「世界自然保護基金」(WWF) と「オランダ持続可能貿易推進団体」(IDH) が2010年に設立した国際的な非営利組織で、事業者からの申請に応じて、環境や資源を守りながら、持続可能な養殖漁業を営んでいるかどうかを審査・認証しています。「環境にやさしい養殖魚」だと認められると、事業者は別途ライセンス契約締結後にエコラベル (写真3) を商品に貼ることができます。

責任ある養殖により生産された水産物 ASC
写真3 ASC認証ラベル

夢は遊佐の特産品

サクラマスは昔から山形県庄内地方の春祭りのごちそうとして親しまれていますが、最近は漁獲が減り、春祭りでも食べる機会が減っているそうです。養殖試験施設のある遊佐町は「陸上養殖が軌道に乗って、輸出もできるようになれば、町の新たな特産品になる」と新しい地場産業の誕生に大きな期待を寄せています。

サクラマスとヤマメの関係

サケ目サケ科。太平洋北西部に分布。成長して海へ下り、オホーツク海などを回遊し、1年後に産卵のため、生まれた川へもどる習性をもちます。海へ下らずに一生河川に残るものをヤマメといいます。

事業名

「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業 (うち「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業)

事業期間

平成28年度 ~ 令和2年度

課題名

革新的技術を集約した次世代型閉鎖循環式陸上養殖生産システムの開発と日本固有種サクラマス類の最高級ブランドの創出

研究代表機関

マルハニチロ株式会社