生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

BRAINテクノニュース

BRAINテクノニュース 第134号

発行年月日: 0000年12月 0日

総説

生体との適合性を高めた絹糸の作製と再生医療分野への応用

朝倉 哲郎
東京農工大学大学院 共生科学技術研究院

高齢化社会に向けて急務な、再生医療を担う優れた材料の開発研究は極めて活発である。絹は再生医療材料に必要な高い強度とタフネスを有するとともに、長年にわたり縫合糸として体内に埋め込まれて使用されてきた実績がある。そこで、さらに生体との適合性を高め、再生医療用にその一次構造(アミノ酸の並び方)を改変した新しい絹を設計、トランスジェニック蚕を用いて生産した。新しい絹の再生医療―血管、骨・歯、角膜、皮膚―への応用について紹介する。

国内情報

カイコを用い、インフルエンザウイルス吸着剤の合成に必要な酵素を生産することに成功

朴 龍洙
静岡大学 創造科学技術大学院 統合バイオサイエンス部門

インフルエンザウイルス感染初期においてウイルスと相互作用する受容体認識は、糖鎖結合様式に深く関わっている。本研究では、糖鎖結合様式に欠かせられないa2,6シアリルトランスフェラーゼ(a2,6SiaT)をカイコで発現し、精製を行い、インフルエンザウイルス感染阻害剤の合成に用いた。マウスを用いたin vivo感染試験において致死的なインフルエンザウイルス感染からの防御増強効果を確認した。

CRES-T法を利用した新形質花きの開発

四方 雅仁1 ・鳴海 貴子2 ・佐々木 克友1 ・山口 博康1 ・間 竜太郎1 ・大坪 憲弘1
1独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所、2香川大学 農学部

CRES-T法は、シロイヌナズナの転写因子に転写抑制ドメインを付加したキメラリプレッサーを用いることで、その標的遺伝子の機能を抑制する技法である。この手法をトレニアなどの花き園芸植物に適用することで、新規の花色や花形を持つ花きを作出できることが示された。さらに効率的に有用形質を得るため、バルク感染によるスクリーニングを行った。期待通り花で効率よく色や形の変化が表れ、CRES-T法による花きの形質改変の有効性が示された。

緑色光で植物の病害抵抗性を引き出す

石田 豊・工藤 りか・山本 敬司・末包 亜矢子・小松 精二
株式会社四国総合研究所バイオ研究部

特定波長の光を用いて植物の病害を防ぐ『光防除』を目指し、緑色光照射による病害防除技術を開発した。緑色光の照射は、植物に対して一種のストレス刺激となり、病害抵抗性の誘導を引き起こすと考えられ、イチゴ炭そ病をはじめとする各種果菜類や花卉類の炭そ病や灰色かび病に防除効果を示すことが確認できた。現在イチゴ育苗向けの病害防除システムとして商品化を進めており、今後は様々な農作物への適用が期待される。

イチゴの植物工場的な生産を可能とする移動栽培装置

林 茂彦・齋藤 貞文・山本 聡史
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター 園芸工学研究部

イチゴの栽培ベッドを通路がない状態で並べ、縦横の2方向に循環移動させる移動栽培装置を開発した。慣行の高設栽培では栽培ベッドの間に幅90cm程度の通路が必要だが、この装置では作業者は一定の場所で定植や収穫ができる。栽植密度は15,300株/10aで慣行のおよそ2倍程度であった。促成栽培に加え、冷蔵苗や四季成り品種を組み合わせることで、イチゴの植物工場的な周年生産が期待される。

地域の先端研究

ナガイモにインフルエンザウイルスの感染抑制作用タンパク質成分(デオスコリンA)があることを発見

三上 稔之1・畑山 一郎1・加藤 陽治2・伊藤 聖子2・工藤 重光3・市田 淳治4・奈良 岡馨4・ 柴田 浩夫5・小田桐 弓芽乃5
1青森県環境保健センター、2弘前大学教育学部、3弘前大学地域共同研究センター、 4青森県工業総合研究センター弘前地域技術研究所、5株式会社ミリオン

ナガイモ(Dioscorea batatas)抽出液には、試験管内試験においてインフルエンザウイルスの感染を抑制することが確認され、その成分は、60°C1時間では機能を保持し、極端な酸性(pH4.0)やアルカリ性(pH9.5)では失活する。成分の特定では、精製物のアミノ酸配列から抗ウイルス活性の本体は、ナガイモのデオスコリン A様貯蔵蛋白質と称すべき物質である事が明らかになった。ナガイモの抗ウイルス活性機能を維持した加工食品を開発した。今後、作用機序等の研究により広範な利用が期待できる。

文献情報

未経産牛由来卵子へのコルセミド処理は、核移植胚の発生率、受胎率及び分娩率を向上させる

Colcemid-Treatment of Heifer Oocytes Enhances Nuclear Transfer Embryonic Development, Establishment of Pregnancy and Development to Term.
G. Li et al. Molecular Reproduction and Development, 76, 620–628, 2009

ヒナゲシからの花粉側自家不和合性決定因子の単離

Identification of the pollen self-incompatibility determinant in Papaverrhoeas.
M.J.Wheeler et al. Nature, 459, 992-995, 2009

出芽酵母において、Pho91はリン酸・ポリリン酸代謝を制御する液胞リン酸トランスポーターである

Pho91 Is a Vacuolar Phosphate Transporter That Regulates Phosphate and Polyphosphate Metabolism in Saccharomyces cerevisiae.
H.C. Hurlimann et al. Molecular Biology of the Cell, 18, 4438-4445, 2007

DHA複合リポソームによるヒト腫瘍細胞のアポトーシス誘導

Induction of apoptosis of human tumor cells by hybrid liposomes including docosahexaenoic acid.
K. Goto et al. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 18, 1880–1883 ,2008