九州沖縄農業研究センター

所長室から

頼れる専門家集団たれ

九州沖縄農業研究センター所長 井邊 時雄

井邊 時雄2008年9月16日付けで、九州沖縄農業研究センター(九州沖縄農研)所長を拝命した井邊(いんべ)です。石垣島にある国際農林水産業研究センターの熱帯・島嶼研究拠点より赴任しました。九州沖縄農研での勤務は二度目で、32年と5ヶ月前に旧・九州農業試験場で採用になり、筑後(当時の本場)の作物第一部作物第1研究室で10年間、水稲育種に従事しました。その後、マレーシアやフィリピンに派遣されて稲の研究に従事し、国内ではつくばの農業研究センターや作物研究所で勤務しました。

さて、農研機構、九州沖縄農研を取り巻く情勢は変化してきています。食料自給率の向上や食の安全性に関する憂慮から、国産農作物への要望が高くなっています。したがって農業試験研究機関が果たすべき役割は当然高まってくると思います。そのような中で九州沖縄農研の位置付けをしっかりと考えていかなければなりません。

ところで、農研機構の優秀な研究成果を表彰するNaro Research Prize 2008を九州沖縄農研から2グループが受賞しました。赤かび病研究チームの吉田さん、中島さん、河田さんによる『二条大麦の赤かび病防除適期は穂揃い10日後頃の葯殻抽出期である』と、久留米のイチゴ周年生産研究チームの沖村さん、曽根さん、壇さん、北谷さんによる『促成イチゴ栽培で早期収量の増加と収穫の平準化が可能なクラウン温度制御技術』です。ともに、アイデアの活かされた画期的な成果であると同時に、それぞれの研究対象にじっくりと取り組んできた成果です。これらの人々は、それぞれの分野で、一流の専門家として頼りにされつつあると思います。赤かび病については、まず九州沖縄農研の吉田さんに相談しよう、ということになるでしょう。農研機構の研究所は、このような頼りにされる専門家集団となる必要があります。農業の現場を踏まえて研究をできるというメリットを十分に生かして、骨太な研究をやって欲しいと思います。

そのためには、個々の研究者が一人で研究を進めるだけでは限界があるのではないでしょうか。チーム内や研究所内の連携はもとより、農研機構という組織のメリットを十分に生かし、それぞれの分野のネットワークにより、研究・育種素材や技術・知識を共有して活用することが重要と思います。それぞれの専門分野をリードする世界的な水準で(少なくともオールジャパンのレベルで)研究することが農研機構の研究者の責務です。九州は重要な食料基地でありますし、南西諸島は貴重な亜熱帯環境にありますから、九州沖縄農研は農研機構の中でも重要な研究の拠点であると考えています。ここを維持・発展させることが日本農業の発展に貢献することと信じています。

それから、我々の成果を普及するためアピールすることも重要です。良いものを作れば認めてくれるという時代ではありません。『所長キャラバン』など、九州沖縄農研のユニークな広報普及活動は高く評価されており、今からそれに参加することが楽しみです。それだけではなく、論文を書く必要があります。これは機会あるごとに言っていくことになると思いますが、研究者として論文に結びつけることは重要です。技術開発が目標ですが、論文にすることによって、学問的な評価を受け、自分の研究を見直すことにもなります。学会の中でも十分に認知されることにより、我々、九州沖縄農研の評価も高まることになると思います。

研究所の発展ということに関連して、労働災害のない安全な職場を目指す必要があります。気の緩みがとんでもない大事故につながる可能性があります。職員の皆さんには、適度に緊張感のある職場となるよう、『基本に忠実に』をモットーに業務を遂行する必要があります。それから、「コンプライアンス」ということも大変重要です。職員一丸となって努力しましょう。
私も、これから、いろいろ勉強する必要があります。皆さんの忌憚のない意見を聞かせていただくよう、よろしくお願いします。