要約
土着天敵は極早生ウンシュウ園における夏期のミカンハダニの発生を抑制する。土着天敵の働きを活かすため夏期のダニ剤散布を削減し、マシン油乳剤と組合せることで、葉の被害が軽減でき、ミカンハダニの防除回数を削減した減農薬防除体系が可能である。
- キーワード: ミカンハダニ、カブリダニ類、マシン油乳剤、減農薬防除体系
- 担当: 熊本農研果樹・病虫化学研究室
- 代表連絡先: 電話0964-32-1723
- 区分: 九州沖縄農業・病害虫、果樹
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
近年、慣行防除下のウンシュウミカン園において、ミヤコカブリダニがカブリダニ類の優占種として発生し、ミカンハダニの個体群密度を抑制している可能性が指摘されている(Katayama et al., 2006)。本県の極早生ウンシュウでも防除体系の違いによってカブリダニ類が増殖し、夏期のミカンハダニを抑制することを確認している。しかし、土着天敵類の種構成や発生量は周辺環境や園地管理によって異なるため、慣行防除下ではそれらの効果があまり評価されず、積極的な活用がなされてこなかった。そこで、慣行防除園における土着天敵類とマシン油乳剤を活用した減農薬防除体系を確立する。
成果の内容・特徴
- 慣行防除下の極早生ウンシュウ「豊福早生」において、土着天敵であるカブリダニ類は、ミカンハダニの発生が夏期に一時的に急増した後に一時的な増加傾向を示し、ミカンハダニの密度低下とともに減少する(図1a、図1b)。なお、確認されたカブリダニ類の優占種はミヤコカブリダニである。
- マシン油乳剤の1回防除(夏期防除1回削減)は、夏期無防除(夏期防除2回削減)より、ミカンハダニの発生を抑制し、カブリダニ類も確認できる(図2a、図2b)。
- 慣行防除の夏期2回防除(夏期防除削減無し)は、ミカンハダニの発生を抑制するが、カブリダニ類は殆ど確認できない(図3a、図3b)。
- ミカンハダニによる葉の被害程度は、果樹研内圃場ではマシン油乳剤の1回防除(夏期防除1回削減)と夏期2回防除(夏期防除削減無し)では差が見られたものの、現地圃場では差がなく、果実品質は、両圃場とも葉の被害程度に関係なく、差は認められない(表1)。
成果の活用面・留意点
- カメムシ類やアザミウマ類などの防除に合成ピレスロイド系薬剤を用いると、土着天敵の発生に悪影響を及ぼす可能性があるため使用を控え、カブリダニ類に影響の少ないネオニコチノイド系薬剤を使用する。
- 収穫後、秋期の高温によってミカンハダニが多発する場合には、冬期にマシン油乳剤による防除を行い、越冬密度を下げる必要がある。
具体的データ
(杉浦 直幸)
その他
- 研究課題名: 環境に配慮した早生ウンシュウの病害虫被害軽減技術の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2007~2009年度
- 研究担当者: 杉浦 直幸、吉田 麻里子、森山 美穂、山田 一宇、榊 英雄