九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

沖縄県の野菜類における特異な害虫ハダニ相

要約

日本本土や台湾では害虫とみなされていないナンゴクナミハダニとミヤラナミハダニが沖縄県全域で野菜類に頻繁に寄生する主要種となっている一方で、日本本土や台湾の主要害虫であるナミハダニ黄緑型とカンザワハダニは県南西部の先島諸島では稀である。

  • キーワード: ハダニ、種構成、野菜、沖縄
  • 担当: 沖縄農研セ・病虫管理技術開発班・害虫研究チーム
  • 代表連絡先: 電話098-840-8504
  • 区分: 九州沖縄農業・病害虫
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

害虫の種構成を調べ、優占種を明らかにすることは、総合管理技術確立の基礎として不可欠であるが、沖縄県を含む南西諸島においては、ハダニ類等をはじめとする微小害虫類の種構成に関する情報はほとんどない。そこで今回、沖縄県において野菜類を加害するハダニの種を県全域に渡って調べ、ハダニ類防除の基礎とする。

成果の内容・特徴

  • 沖縄県の野菜類(主としてマメ科・ウリ科・ナス科)に寄生するハダニ類として、ナミハダニ属(Tetranychus )に属する8種のハダニが発見される(図1)。
  • これらのうち、日本本土や台湾では主要害虫とみなされていないナンゴクナミハダニT. okinawanus とミヤラナミハダニT. piercei が沖縄県全域に渡って主要種となっている(図1)。
  • 日本本土と台湾で主要害虫となっているナミハダニ黄緑型T. urticae (greenform)とカンザワハダニT. kanzawai は、沖縄県の北東部(沖縄諸島)では主要種であるが、南西部(先島諸島)では稀である(図1)。
  • 日本本土と台湾では害虫とみなされていないナンセイナミハダニT. neocaledonicus が、上記4種に続く頻度で野菜類に寄生している(図1)。
  • 日本本土と台湾に分布する害虫種のナミハダニ赤色型T. urticae (redform)とイシイナミハダニT. truncatus は、沖縄県からは発見されない。
  • 多くの種が施設栽培と露地栽培の圃場の双方から同程度に発見されるが、ナミハダニ黄緑型は、ほぼ施設圃場のみに生息する(データ省略)。
  • インゲン・ナス・ヘチマをはじめとする多くの作物でナンゴクナミハダニが優占しているが、トウガン・スイカ等一部の作物では、ミヤラナミハダニやナミハダニ黄緑型のほうが生息数が多い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 適切な防除のためには、寄生しているハダニの種を明らかにしたうえでの防除法の選択が必要となる。
  • 雌成虫の体色が黄白色~緑色を呈するナミハダニ黄緑型以外の種については、いずれも雌の体色が赤く互いに形態が類似するため、生体の外見からの種同定は困難であり、正確な同定にはプレパラート標本の作製と検鏡が必要となる。
  • このため、雌成虫が赤色を呈する種については、簡易な種の識別法の開発が望まれるとともに、薬剤感受性の種間差の有無を明らかにする必要がある。

具体的データ

図1

表1

(大野 豪、喜久村 智子、貴島 圭介)

その他

  • 研究課題名: 亜熱帯地域における難防除微小害虫類の種構成の解明
  • 予算区分: 国庫1/2(環境にやさしい病害虫管理技術確立事業)
  • 研究期間: 2009年度
  • 研究担当者: 大野 豪(沖縄農研セ)、宮城 聡子(沖縄農研セ宮古島)、喜久村 智子(沖縄農研セ)、後藤 哲雄(茨城大農)、北島 康樹(茨城大農)、大石 毅(沖縄農研セ宮古島)、貴島 圭介(沖縄農研セ)
  • 発表論文等: Ohno et al. (2009) Appl. Entomol. Zool. 44(4):627-633