九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

砂丘ラッキョウ植付機

要約

砂丘ラッキョウ栽培に適応する歩行型半自動植付機を実用化した。作業能率は4.5h/10a程度で、人力の3倍程度の能率向上が見込める。また、種球の直立植付率は94%以上で、欠株は1.2%以下、収量は慣行栽培と遜色ない。

  • キーワード:ラッキョウ、植付作業、半自動植付機
  • 担当:鹿児島県農総センター・大隅支場・農機研究室
  • 代表連絡先: Tel:0994-62-2001
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・普及

 

背景・ねらい

砂丘ラッキョウ栽培は、そのほとんどが手作業で行われ、全労働時間は250h/10aとなっている。特に植付けと収穫後の調製作業は機械化が大幅に遅れており、生産現場からの省力化要望が多い。ここでは、緊急性が求められる植付作業について、直立植を前提とした半自動植付機の実用化と機械植付けによる標準的な栽植様式を確立する。

成果の内容・特徴

  • 植付機の概要:本機は一工程4条植用の歩行型半自動植付機で、全長2,200mm、全幅1,300mm、全高1,200mm、機体質量270kgで出力1.3kwガソリンエンジンを搭載している。作業人員は2名である(表1)。
  • 植付機構:種球の投入は回転テーブル供給カップに人力で行い、投入された種球は4個の開孔器に自動落下したのち、クランク運動により植床に挿し込まれる仕組みで、平床裸地栽培、マルチ栽培に対応可能である(図1)。標準的な栽植様式は裸地栽培の場合、畦幅120cm、条間24cm、株間10~15cmで、マルチ栽培の場合は、畦幅が135cm程度、床幅100cmである。
  • 作業能率:植付作業時間は裸地栽培で4.6h/10a程度(空走含む)、マルチ栽培で4.2h/10a程度で慣行の3倍の能率が見込める。2人作業の延べ作業時間は、9h/10aで、慣行人力植えの28h/10aの1/3程度である。作業可能面積は作業可能日数24日、実作業率0.7の場合2.7haである(データ略)。
  • 作業精度:植付の向きは種球長により変動するが、裸地栽培では上向植付が94.0%以上,欠株率が1.2%以下である(表2)。マルチ栽培でも同程度であり、マルチの切開長は4cm程度である。
  • 生育、収量:規格品収量は慣行栽培と遜色ない。株間10cmでは慣行の1.3倍程度の栽植株数で、密植による増収効果がある。また、マルチ栽培も増収効果がある(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 裸地栽培では植付時の走行安定と直進性を確保するため、植付工程に入る前に空走して轍を形成し、その轍に車輪を入れ込んで走行させる。
  • 乾燥状態の砂地においては、植穴が崩落し種球が埋没することがある事から、適度な土壌水分条件下で作業を行う。
  • 本機は、現在鹿児島県薩摩川内市、南さつま市の砂丘地で普及開始中である。

具体的データ

図1

表1

表2

図2

  

その他

  • 研究課題名:地域特産物の生産性向上のための機械化作業技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:溜池雄志、大村幸次、勝野志郎(井関農機(株))、島崎浩((株)ヰセキ九州)