九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

皮ごと食べられ省力栽培できる無核赤系ブドウ「秋鈴」

要約

「秋鈴」は、「巨峰」より遅い9月中下旬に成熟し、紫赤色の皮ごと食べられる良食味の無核ブドウである。短梢せん定でも花穂着生が良好でジベレリン処理が不要であり、花穂整形や摘粒などの栽培面の省力化が図れる。

  • キーワード: ブドウ、新品種、無核、省力化
  • 担当: 福岡農総試・果樹部・果樹育種チーム
  • 代表連絡先: Tel:092-922-4946
  • 区分: 九州沖縄農業・果樹
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

現在の施設栽培用ブドウは「巨峰」に類似した特性を有する品種が主体となっているが、消費者ニーズは多様化しており、特徴のある品種への需要が高まっている。また、近年増加している無核栽培では、満開時および満開後の2回にわたるジベレリン処理が必要で摘粒労力も多いなど、生産面の課題も大きい。このような背景のもと、施設栽培用ブドウの消費拡大を図るため、外観・食味とも「巨峰」とは異なる特性を有し、無核性で栽培労力の軽減が図れるブドウ新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 1994年(平成6年)に福岡県農業総合試験場において、無核の「ルビーシードレス」に大粒の「ハリセフ」を交雑して得られた実生を胚培養によって育成・選抜した二倍体品種である。
  • 2004年(平成16年)から系統番号「ブドウ福岡13号」としてブドウ第11回系統適応性検定試験に供試して検討した結果、2009年(平成21年)1月の同試験成績検討会において新品種候補として妥当であるとの結論を得た。
  • 樹勢は強く、発芽期は4月上旬、開花期は5月下旬、収穫期は「巨峰」より遅い9月中下旬である。花穂着生は良好で、短梢1芽せん定栽培が可能である。香り・渋味はなく、裂果の発生は少である(表1、表2、一部データ略)。
  • 収量は「巨峰」より多く、果皮は紫赤色で皮ごと食べられ、果粒重は自然状態で約6gである。糖度は18度、酸含量は0.4%程度で良食味である(表2、図1)。
  • 栽培労力の評価では、無核栽培の「巨峰」と比べてジベレリン処理が不要で花穂整形および摘粒労力が少なく、省力化が図れる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 耐寒性は低く、山形県以南の地域で栽培可能である。
  • 花穂整形:開花前に先端6~7cmに切詰め、摘粒:軸長8~9cm当たり40~50粒
  • 幼木時(樹齢5年以下)は果粒肥大が劣るので、樹冠拡大を行い樹勢を落ち着かせる。
  • トンネル栽培では裂果が発生しやすくなるので、果粒軟化期からの定期的な灌水やマルチ敷設によって土壌水分の急激な変動を防ぐ。
  • トンネルあるいは無加温ハウス栽培では、慣行防除体系の中で特に注意を要する病害虫の発生はない。

具体的データ

表1

表2

表3

図1

(白石 美樹夫)

その他

  • 研究課題名: 温暖多雨地帯における施設ブドウ育種
  • 予算区分: 指定試験
  • 研究期間: 1994~2008年度
  • 研究担当者: 白石 美樹夫、平川 信之、能塚 一徳、鈴木 勝征、井樋 昭宏、粟村 光男、浦 広幸、藤島 宏之、千々和 浩幸、松本 和紀