要約
ニホンナシ「幸水」1年生樹を20~40Lの不織布製ポットで1年間育成して植栽することにより、直接圃場に植え付けた場合より根量が多く、生育が促進される。
- キーワード: ナシ・改植・大苗・ポット
- 担当: 佐賀果樹試・落葉果樹研究担当
- 代表連絡先: Tel:0952-73-2275
- 区分: 九州沖縄農業・果樹
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
県内のナシは樹齢30年を越える樹が多く、生産性の低下が問題となっている。そのため改植による園地の若返りが重要な課題となるが、不十分な土壌改良や苗木管理により植え付け後の生育が不良となり、早期成園化が難しく改植更新が進んでいない。そこで、生育促進による未収益期間の短縮と栽培管理の容易化を目的とした、不織布製ポットによる大苗育成について検討する。
成果の内容・特徴
- 遮根性の不織布製ポットに1年生苗木を植え付け、埋設して育苗した場合(図1)、育苗1年後の細根量は不織布製ポットで育苗した樹が地植えした樹より細根量が多い。また、ポットの容量が大きいほど細根量が多い(表1)。
- 育苗1年後の総新梢長は40Lポットで最も長く、次いで20Lポット、地植え、10Lポットの順となる(表2)。
- 育苗した大苗を不織布製ポットごと掘り上げ、ポットを除去して植え付けた場合、植え付け1年後の総新梢長は、20L、40Lポットがほぼ同じ長さで地植え、次いで10Lポットの順となる(表3)。
- 以上のことから、20~40Lの不織布製ポットを利用した大苗育成によって、植え付け後の生育が促進される。
成果の活用面・留意点
- ポット内の土壌および対照区の植え穴(80cm×80cm×40cm)に使用した土壌は山土にピートモスを3割加えたものである。
- 育苗中は支柱を使ってしっかりと主枝および主枝候補となる新梢を固定する。
- 肥料は植え付けてから1月後に緩効性被覆肥料(14-12-14)を100g程度表面施用する。
- 育苗に使用する圃場の排水性が悪い場合は、事前に排水対策を実施する。
- 育苗中は、乾燥防止のため麦ワラ等で地表面マルチを行い、夏季に晴天が続く場合にはかん水を行う。
- 大苗1本当たりの生産コストは、苗木代を除いて600円程度である(不織布製ポットおよびピートモス代を考慮)。
具体的データ
(加藤 恵)
その他
- 研究課題名: ナシの改植に伴う環境負荷軽減のための画期的な肥培及び土壌管理技術の確立
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2006~2010年度
- 研究担当者: 稲富 和弘、加藤 恵、福田 浩幸、児玉 龍彦