九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

「ヒリュウ」台「カワチバンカン」の特性

要約

「カワチバンカン」の台木に「ヒリュウ」を用いると、カラタチ台に比べ、樹がコンパクトになり、1樹当たり収量は少ないものの、単位樹冠容積当たりは同程度である。また、糖度は高く、収穫やせん定などの作業時間も短縮できる。

  • キーワード:カワチバンカン、ヒリュウ台、低樹高化、省力化
  • 担当:熊本県農研セ・天草研
  • 代表連絡先: Tel:0969-22-4224
  • 区分:九州沖縄農業・果樹
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

熊本県天草地域の特産果樹である「カワチバンカン」は、樹勢が強く、喬木性である。樹高が高くなると、管理作業時に脚立等が必要となり、作業効率が悪いうえ、転倒などの危険を伴う。また、現在、当地域の果樹農家は高齢化が進んでいるため、管理作業の省力化および軽労働化が急務となっている。そこで、わい性台木の「ヒリュウ」を用いた「カワチバンカン」の特性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 「ヒリュウ」台「カワチバンカン」の樹高はカラタチ台の7割程度、樹冠容積は5割程度の大きさである(図1)。
  • 「ヒリュウ」台の2003年から2007年までの5年間の累積収量は、1樹当たりではカラタチ台の5割程度である。単位樹冠容積当たりではカラタチ台と同程度である(図2)。また、10a当たり「ヒリュウ」台74本、カラタチ台30本植えで換算した8年生樹(結実5年目)の単位面積当たり収量はカラタチ台と同程度である(データ略)。
  • 「ヒリュウ」台の糖度は、年次により多少の変動はあるが、カラタチ台より高く、クエン酸は同程度である(表1)。
  • 「ヒリュウ」台の作業時間は短くなり、10a当たりの収穫時間はカラタチ台の75%、せん定時間は90%である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 「ヒリュウ」台カワチバンカンは脚立等を使用する必要がほとんどないため、省力化・軽労働化を図れる。
  • 「ヒリュウ」台「カワチバンカン」は結果期以降の樹冠拡大が小さいため、未結果期に樹高2m程度を目安とし、十分に樹冠拡大を図っておく(おおよそ4年生から着果を始める)。
  • 「ヒリュウ」台は浅根であるため、防風樹の植栽や支柱への誘引を行い、強風による倒伏防ぐ。また、過乾燥にならないよう、適度にかん水を行う。
  • 「ヒリュウ」台は着果過多になりやすいため、適正着果量に努める。

具体的データ

図1

図2

表1

図3

 

その他

  • 研究課題名:中晩生カンキツの低樹高栽培技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2001~2007年度
  • 研究担当者:神山光子、古川珠子、奥田良幸、猪原健一