要約
下水汚泥焼却灰はク溶性リン酸に富み、リン酸肥料の代替としてク溶性リン酸含有量を基に野菜に施用した場合リン酸肥効は重焼リンに比べやや劣るが、過リン酸石灰と組み合わせて施用することで重焼リンと同等程度の肥効が得られる。
- キーワード: 下水汚泥焼却灰、リン酸肥料、肥料代替
- 担当: 熊本農研セ・生環研・土壌肥料研究室、土木研究所
- 代表連絡先: Tel:096-248-6447
- 区分: 九州沖縄農業・生産環境・土壌肥料
- 分類: 技術・参考
背景・ねらい
リン酸肥料は、リン鉱石資源の枯渇等により今後の供給が懸念されており、リン酸肥料を削減できる栽培技術の開発とともにリン酸肥料代替資源の利用が求められている。一方、下水処理施設で排出される下水汚泥焼却灰はリン酸を多く含んでいるが、その多くは有効活用されることなく廃棄物として処分されている。
そこで、リン酸肥料代替資源として下水汚泥焼却灰の有効性を検討する。
成果の内容・特徴
- 供試した下水汚泥焼却灰は全リン酸を20%程度含有し、うち水溶性リン酸は0.1%未満であるが、ク溶性リン酸は10%前後含有している(表1)。
- コマツナ及びブロッコリー栽培では、下水汚泥焼却灰のク溶性リン酸含有量を基にリン酸肥料代替資材として施用すると、重焼リンとの比較では作物の乾物生産量およびリン酸吸収量は少なくなる。下水汚泥焼却灰に過リン酸石灰を組み合わせてク溶性リン酸と水溶性リン酸が成分比で1対1となるように施用した場合、重焼リンと比較して作物の乾物生産量は同等以上でリン酸吸収量は同等程度となる(図1、表2)。
- トマト栽培では、下水汚泥焼却灰のク溶性リン酸含有量を基にリン酸肥料資材として施用すると、重焼リンとの比較では作物の乾物生産量は同等となるがリン酸吸収量はやや少なくなる。下水汚泥焼却灰に過リン酸石灰を組み合わせてク溶性リン酸と水溶性リン酸が成分比で1対1となるように施用した場合、重焼リンと比較して作物の乾物生産量とリン酸吸収量のいずれも同等程度となる(図1、表2)。なお、果実の乾物生産量のリン酸資材による差は小さい(図1)。
成果の活用面・留意点
- 下水汚泥焼却灰は、下水処理施設で処理された脱水汚泥を高温で焼却した灰である。
- 下水汚泥焼却灰をリン酸代替資材として利用する場合は、焼成汚泥肥料として肥料登録が必要である。なお、重金属含有量の基準を満たすことが必須条件である。
- 下水処理場の立地する環境や処理方式によって、下水汚泥の成分は変動する。
- リン酸吸収係数2,300mg/100g乾土、Truog法リン酸5~10mg/100g乾土(コマツナ)、3~12mg/100g乾土(ブロッコリー)、15~27mg/100g乾土(トマト)の厚層多腐植質黒ボク土における結果である。
具体的データ
(熊本県)
その他
- 研究課題名: 施肥位置改善及び代替資源利用によるリン酸及びカリ肥料の低コスト施肥技術
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2009~2011年
- 研究担当者: 白石 由美子、城 秀信、岡本 誠一郎・堀尾 重人(土木研究所)、宮本 豊尚