九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

転換畑を水田に戻した場合の水稲栽培期間中の温室効果ガス発生量

要約

大豆を2ヶ年作付けした転換畑を復田した場合、復元1年目は水田から発生するメタンと一酸化二窒素の総量(GWP;二酸化炭素換算)は約60%減少するが、復元2年目では水稲連作田と同等となる。

  • キーワード: 復田、温室効果ガス、メタン、一酸化二窒素
  • 担当: 熊本農研セ・生環研・土壌肥料研究室
  • 代表連絡先: Tel:096-248-6447
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境(土壌肥料)
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

水田での水稲栽培期間中に発生するメタンおよび一酸化二窒素は温室効果ガスとして地球温暖化への影響が懸念されており、その発生実態を正しく評価することが求められている。

水田における水稲作付けでは二毛作や水稲単作による水稲連作が主体となるが、水田転作の拡大により田畑輪換の利用も多くなっている。

そこで水稲連作圃場と転換畑復田圃場での水稲栽培期間中のメタンおよび一酸化二窒素の発生実態をモニタリングし、西南暖地での転換畑復田が水稲栽培期間中のメタンガス発生に及ぼす影響を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 水稲作付け中の期間中に水田から発生する温室効果ガスは大部分がメタンガスであり、一酸化二窒素の発生量は少ない(図1、図2、図4)。
  • 水稲連作水田から発生するメタンガスは水稲の中干し期を境に前後に2つの発生ピークが見られる。逆に一酸化二窒素の発生量は中干し期に多い(図1、図2)。
  • 転換畑復田1年目における水稲栽培期間中のメタンガス発生は、中干し後にやや大きい発生ピークが見られるものの水稲連作水田に比較すると水稲栽培期間を通して低く推移し、温室効果ガスの総量(GWP;二酸化炭素量換算)は連作水田より63%減少する(図1、図2、図4)。
  • 転換畑復田2年目における水稲栽培期間中のメタンガス発生は、水稲連作水田とほぼ同じ発生パターンを示し、メタンガスの発生量も同等となる(図1、図2、図4)。
  • 転換畑復田水田の水稲栽培期間中の酸化還元電位は水稲連作水田と大きな差は見られない。

成果の活用面・留意点

  • 供試した水田は灰色低地土を客土した水田であり、田畑輪換水田は大豆を2年間作付けした後、復田した水田である。
    収穫後の稲わらおよび大豆茎葉等の作物残渣は株元以外はほ場外へ持ち出している。
  • 復元田における水稲収量は、復元1年目、復元2年目いずれにおいても連作水田とほぼ同等である(データ省略)。

具体的データ

表1

図1

図2

図3

図4

(熊本県)

その他

  • 研究課題名: 水田における田畑輪換が炭素循環に及ぼす影響評価
  • 予算区分: 委託
  • 研究期間: 2006~2009年度
  • 研究担当者: 水上 浩之、城 秀信、郡司掛 則昭
  • 執筆責任者: 城 秀信