九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

鹿児島県農耕地土壌化学性の30年間の実態と変化の特徴

要約

過去30年間(1979~2007)における本県土壌の土壌化学性の変化の特徴は畑土壌へのトルオーグリン酸の蓄積と、交換性石灰の不足傾向である。

  • キーワード: 土壌モニタリング調査、有効態リン酸、石灰飽和度、リン酸蓄積
  • 担当: 鹿児島農総セ・生産環境部土壌環境研究室
  • 代表連絡先: Tel:099-245-1156
  • 区分: 九州沖縄農業・生産環境
  • 分類: 行政・参考

背景・ねらい

本県農業生産の維持拡大と環境と調和した農業の推進には、土壌実態の把握が重要である。そのため、1979年から2007年にかけて、県内農耕地に設置した定点ほ場を調査した(1巡/5年、計6巡)。ここでは、本県農耕地土壌の過去30年における実態と変化の特徴を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 6巡目におけるトルオーグリン酸含量の平均値は、野菜畑、茶園、果樹園、飼料畑では診断基準値を上回っている(表1)。基準値を超過した地点は水田、普通畑では20%以下で少ないが、野菜畑が38%、茶園が65%、果樹園が75%、飼料畑が44%であり、特に茶園、果樹園でリン酸が多く蓄積している傾向にある(図1)。
  • 30年間における地目毎のトルオーグリン酸含量の推移を平均値で見てみると、水田、普通畑が基準値内で横ばい、その他は増加する傾向で、野菜畑、飼料畑が3巡目、茶園、果樹園が2巡目以降基準値を超過している(図2)。
  • 6巡目における地目毎の各塩基の飽和度を基準値と比較すると、果樹園以外で石灰飽和度が不足している地点割合が多いことが特徴的である(図1)。不足している地点は果樹園42%、水田53%、普通畑57%、野菜畑62%、茶園85%、飼料畑56%である。
  • 30年間における地目毎の石灰飽和度の推移を平均値で見てみると、果樹園は基準値上限付近から下限付近への下降傾向、茶園は基準値を大きく下回って横ばいで推移している。その他は下限値付近を推移し、水田はわずかに下降傾向、野菜畑は下降から横ばい、普通畑、飼料畑は概ね横ばいの傾向である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 土壌環境基礎調査の635定点(調査年度;1巡目1979-1983、2巡目1984-1988、3巡目1989-1993、4巡目1994-1998)、土壌機能モニタリング調査の200定点(調査年度;5巡目1999-2003、6巡目2004-2007)における調査結果を取りまとめた。
  • 花き、緑化樹等調査地点の少ないものは取りまとめ対象から除外した。
  • 調査定点の約60%が黒ボク土壌である。土壌診断基準値は火山灰土に対するものである。

具体的データ

表1

図1

図2

図3

(鹿児島県農業開発総合センター)

その他

  • 研究課題名: 土壌保全対策事業
  • 研究期間: 土壌環境基礎調査(1978~1998年度)
    土壌機能モニタリング調査(1999~2007年度)
  • 研究担当者: 西 裕之、森 清文