九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

大豆―小麦体系での浅耕栽培で生じる未耕起層の物理性

要約

大豆―小麦体系において耕起深を浅くする浅耕栽培を継続すると作土層の未耕起部分が新たな層となる。この層では主に粗大孔隙量が減少して緻密になるため、耕起した場合の同じ深さの層に比べて体積含水率が高く推移する。

  • キーワード: 大豆、浅耕栽培、粗孔隙、水分特性、固相率
  • 担当: 佐賀農業セ・土壌・肥料研究担当、九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先: Tel:0952-45-2141
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

大豆の小明渠浅耕無中耕無培土栽培(浅耕栽培)は普通耕栽培に比べて耕深が浅く、表面排水を促すための小さな明渠があり、耕深が浅いためトラクターの所要馬力が少なく、高速で播種作業ができるという特徴があることに加えて、収量が多くなるといわれている。浅耕栽培により従来の作土層と耕盤層の間に新たな未耕起層ができるが、この層の土壌物理性については研究事例が少ないため、明らかになっていない。
そこで、大豆―小麦体系での浅耕栽培に伴う土壌物理性の変化を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 浅耕栽培でできる未耕起層(図1の浅耕2層目)では他の作土部分よりも固相率が高く(表1)、土壌が緻密である。この層の飽和透水係数は同じ深さにある普通耕の耕起層(図1の普通耕1層目(2))よりは低くなるが、透水性は良い状態のままである(表1)。一方、耕盤層は浅耕栽培を繰り返しても難透水性のままである(表1)。
  • この未耕起層では、大きな孔隙の量が減少し(図2)、孔隙率が低下する(表1)。この層は耕起された作土層とは異なった土壌構造である。
  • 大豆―小麦体系での浅耕栽培により、大豆栽培期間中における土壌の体積含水率は、日降水量25mm以上の降雨後を除き、浅耕栽培で新しくできた未耕起層では普通耕栽培の同じ深さの作土層に比べて高く推移する(図3)。
  • 耕盤層が難透水性(<10-5cm/s)で、8~10月の降水量が平年の40%程度と乾燥した圃場条件下では、浅耕栽培の大豆の初期生育は良く、収量も高い(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は大豆―小麦を2008年から浅耕・普通耕のそれぞれの栽培法で2ヶ年間作付した圃場での結果、および2010年に大豆を作付して得られた結果である。
  • 土壌の体積含水率の調査結果から、浅耕栽培の大豆の初期生育・収量が良い理由の一部を説明できる。
  • 小明渠浅耕無中耕無培土栽培の施肥播種法については、2004年度成果情報「ダイズの湿害軽減のための広畦形成・浅耕播種技術」(中央農研・東海大豆研究チーム)を参照。
  • 普通耕の耕盤層で孔隙率が高いのに飽和透水係数が低いのは、透水に有効な孔隙の量が浅耕の耕盤層とほとんど同じであったためである。

具体的データ

表1

図1

図2

図3

(佐賀農研セ、九沖農研セ 中野 恵子・増田 欣也)

その他

  • 研究課題名: 水田農業における大豆2転輪作以上の地力及び生産力の変化の実態解明と対策
  • 研究期間 : 2010~2015年
  • 研究担当者: 陣内 宏亮(佐賀農研セ)、中野 恵子(九沖農研)、増田 欣也(九沖農研)