九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

穂揃期の葉色及び葉身長による硬質小麦品種「ミナミノカオリ」の子実タンパク質含有率の推定

要約

硬質小麦品種「ミナミノカオリ」について、穂揃期における上位第2葉のSPAD値に葉身長を乗じた値により、子実タンパク質含有率を推定できる。

  • キーワード: タンパク質含有率、SPAD値、葉身長、ミナミノカオリ
  • 担当: 長崎総農林試・作物園芸部・作物科
  • 代表連絡先: Tel:0957-26-4350 
  • 区分: 九州沖縄農業・水田作 
  • 分類: 技術・参考 

背景・ねらい

長崎県では2006年に硬質小麦品種「ミナミノカオリ」を奨励品種に採用したが、その用途は主に手延べ素麺用であり、子実タンパク質含有率12%以上が求められている。これまでに、「ミナミノカオリ」の子実タンパク質含有率は、穂揃期のSPAD値および葉面積と関係が深いと報告され(Nakano et al.2008、Nakano and Morita 2009)、その必要とされる子実タンパク質含有率を得るための実肥量は、穂揃期の葉面積×SPAD値により決定できると報告されている(中野ら私信)。本研究では、さらに簡易な方法により子実タンパク質含有率を推定する方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 穂揃期における上位第2葉の葉身長は、止葉の葉身長に比較して個体間のばらつきが小さいため(図1)、作物体の生育状況を示す指標としては止葉の葉身長より上位第2葉の葉身長の方が適当である。
  • 子実タンパク質含有率と最も相関が高いのは、上位第2葉のSPAD値に葉身長を乗じた値である(表1)。
  • 穂揃期の上位第2葉のSPAD値及び葉身長より子実タンパク質含有率を予測することが可能である(図2)。

 成果の活用面・留意点

  • 本手法は目標とするタンパク質含有率に制御するための指標として活用できる。これまでの知見から、穂揃期追肥として窒素成分で10aあたり2kg施肥することにより子実タンパク質含有率が約1%増加するものとして施肥量を決定する。
  • 本手法は肥効調節型肥料を使用した場合には適用できない。
  • 本試験は長崎県総合農林試験場内圃場(細粒質灰色低地土)での結果である。土壌条件に違いにより出穂後の土壌由来の窒素供給量が異なるため、それぞれの地域でデータの集積による予測式の作成が必要である。
  • SPAD値は、SPAD502(Minolta)で出穂後7~10日後に測定した。
  • 穂揃期追肥は出穂後7~10日後に施肥した。

具体的データ

図1

表1

図2

耕種概要

その他

  • 研究課題名: 実需者ニーズに即した小麦の栽培技術確立
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2004~2007年度