九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

膣内粘液電気抵抗値の測定によりアグー種豚の繁殖効率の向上が期待できる

要約

外貌上の発情徴候の発現に乏しいアグー種豚は、膣内粘液電気抵抗(VER)値法を活用して性ホルモン動態や発情状態を推定し、VER値が最低値を示した2日後または発情兆候発現直後に授精することで受胎率を向上させることができる。

  • キーワード: アグー種豚、膣内粘液電気抵抗値、発情判定
  • 担当: 沖縄県畜産研究センター・飼養環境班
  • 代表連絡先: Tel:0980-56-5142
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(大家畜)
  • 分類: 技術・普及

背景・ねらい

豚の授精適期は通常、陰部の腫脹、発情行動や背圧反応などの発情徴候により判断する。しかし、アグー種豚は発情徴候の発現に乏しく微弱発情や鈍性発情を呈する個体が多いため、繁殖効率を低下させる原因の一つとなっている。そのため、アグー種豚の生産性を高める発情判定や授精適期を的確に判定する技術が求められている。
そこで本試験では、発情や排卵時期を可能な限り正確に捉え、アグー種豚の授精適期をより的確に判断することを目的に、膣内粘液電気抵抗(VER)値の変動と性ホルモンの動態との関連について検討する。

成果の内容・特徴

  • VER値は発情開始2日前に最低値を示す傾向が認められ、VER値を測定することによりアグー種豚の発情開始日を推定できる(図1)。
  • アグーのVER最低値(272.0±12.4unit)は発情日の57.6±5.3時間前である。血漿中エストロジェン(E2)濃度の最高値は,発情日の16時間前(最高値: 51.8±5.8pg/ml)を示す。また、プロジェステロン(P4)濃度が上昇パターンへ転ずるのは発情開始から約24時間後であることが観察される。(図2)。
  • VER値とP4は相関性が高く(P<0.01)、VER値の動態はホルモンによる卵巣の周期的変化を反映している(表1)。
  • VER値を活用した人工授精により受胎率が著しく向上する(表2)ため、VER値をアグー種豚の授精適期判断指標として利用できる。

成果の活用面・留意点

  • VER値の測定は、市販の膣内電気抵抗測定器(ポーランド、DORAMINSKI社製、豚・羊用)を使用し、1日1回朝給餌後に測定している。
  • VER値は、機種によって測定値が異なることを考慮する。
    また測定機器は膣内に挿入することから、使用に当たっては、特に衛生面に留意する。
  • 複数回授精しても受胎しない個体は、獣医師の診断を受けること。
  • 発情徴候を把握するためには、個体毎に継続的な測定が必要である。

具体的データ

図1

図2

表1

表2

(知念 司)

その他

  • 研究課題名: 琉球在来豚アグーの近交退化の緩和および増殖手法の確立(2)アグーの効率的繁殖技術の確立
  • 予算区分: 実用技術
  • 研究期間: 2005~2009年度
  • 研究担当者: 仲村 敏、島袋 宏俊、稲嶺 修、山内 昌吾(琉大農)、吉元 哲兵(琉大農)、建本 秀樹(琉大農)、与古田 稔、知念 司
  • 発表論文等: 仲村ら(2007)沖縄畜研報、45:25-30