九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

養豚排水の窒素に対する生分解性有機物の比率は間欠曝気活性汚泥法の窒素除去に影響する

要約

CODBO/N(窒素濃度に対する生分解性有機物濃度の比率)が5.6以上の養豚排水を間欠曝気活性汚泥法で処理すると高い全窒素除去率が得ることが可能であるが、CODBO/Nが4.0以下では硝酸性窒素の蓄積が起こるため、有機物添加などの対策が必要となる。

  • キーワード: 養豚排水、窒素除去、生分解性有機物、間欠曝気活性汚泥法
  • 担当:佐賀畜試・中小家畜部・畜産環境飼料研究担当
  • 代表連絡先: Tel:0954-45-2030
  • 区分: 九州沖縄農業・畜産・草地(中小家畜・畜産環境)
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

畜産排水の窒素規制は今後一層強化される見込みであり、より高度な窒素除去が必要となることが予想される。嫌気性処理と好気性処理を周期的に繰り返す間欠曝気法は、排水中の窒素除去能力が高く、かつ既存施設の軽微な変更で導入が可能であるため、佐賀県内での養豚排水処理への導入を検討している。しかし、排水の窒素に対する生分解性有機物の比率が低すぎると、間欠曝気法によっても十分な窒素除去が出来ないことが知られている。したがって、同法の導入を図る上で、排水中の生分解性有機物量および窒素量を正確に把握することが重要であるが、一般的に有機物量の指標として利用されているBOD5は、分解速度が遅い一部有機物は数値に反映されないため、生分解性有機物量を正確に示すものとは言い難い。一方、下水分野では、排水中の有機物を分解する微生物の酸素消費速度を測定することにより、生分解性有機物量をより正確に推定できる方法が開発されている。
本研究では、排水中の生分解性有機物量の指標として、Wentzelら(1995)の方法により測定される酸素利用速度をもとにVanrolleghemら(1999)の方法により計算されるCODBO(図2、図3を参照)を採用し、養豚排水の窒素に対する生分解性有機物の比率(CODBO/N)が、間欠曝気法における窒素除去に与える影響を実験室規模の試験(図1)で調査する。

成果の内容・特徴

  • 窒素に対する生分解性有機物の比率(CODBO/N)が5.6以上の養豚排水では、硝酸性窒素の蓄積がなく、高い窒素除去能力が得られる(表1、図4)。
  • 窒素に対する生分解性有機物の比率(CODBO/N)が4.0以下の養豚排水では、生分解性有機物の不足により硝酸性窒素が蓄積するため、有機物添加などの対策が必要となる(表1、図4)。

成果の活用面・留意点

本データは脱窒工程を組み込んだ間欠曝気活性汚泥法での実験結果であり、連続曝気活性汚泥法には適用できない。

具体的データ

図1

図2

図3

表1

図4

(河原 弘文)

その他

  • 研究課題名: 地域未利用資源等を活用した窒素除去技術の確立
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2009~2010年度
  • 研究担当者: 河原 弘文、脇屋 裕一郎、永渕 成樹