要約
抑制ミニトマト連棟ハウス栽培ではハウスの屋根に降った雨水を貯留することによってかん水量の大半を賄うことができる。雨水貯水槽の規模や集水面積は当該地域の降雨データ及びかん水量・回数を用いてシミュレーションを行い決定する。熊本県沿岸地域ではハウス面積に対する雨水集水面積25%、貯水槽容量5m3/10aで9割程度のかん水を雨水で賄える。
- キーワード: 連棟ハウス、雨水利用、ミニトマト、かん水、シミュレーション
- 担当: 熊本農研セ・生環研・施設経営研究室
- 代表連絡先: Tel:096-248-6447
- 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
- 分類: 技術・普及
背景・ねらい
熊本県の沿岸地域の一部では、施設園芸で使用するかんがい用地下水の塩水化が進行し、かんがい用水の確保が大きな問題となっている。そこで、ハウスに降った雨水を効率的に集水してかん水に利用するための技術を開発する。
成果の内容・特徴
- 当該地域の降雨データ、作物へのかん水量データ及び施設の条件を基にシミュレーションを行うことにより、雨水によるかん水割合を推定することができる(図1、図2、表1)。
- ミニトマトは比較的灌水量が少ないことから10a当たり5m3の貯水槽で9割程度のかん水量を雨水で賄うことが可能である。この場合の雨水集水面積はハウス屋根の25%以上必要である(図2)。
- 平成21年10月23日~平成22年5月31日にかけて、2400m2規模のミニトマトハウスにおいて12m3規模の貯水槽を設置し、ハウス面積に対する集水面積を25%確保して雨水かん水の実証を行った結果、平成22年4月5日~4月13日にかけて貯水槽の水は底をついたが、それ以外は雨水によるかん水で賄うことができた(図3)。
- 他の作物についても、対象となる作物のかん水データ、降雨量データ及び集水条件をもとにシミュレーションを行うことで、現地に適した雨水利用率の高い貯水槽の規模と集水面積を決定することができる。
成果の活用面・留意点
- 本成果はかん水量が比較的少ない沿岸地域のミニトマトを対象にシミュレーションしている。また、降雨量データは気象庁八代気象台の過去20年間(1989~2008年度)のデータを使用している。
- シミュレーションを行う際は、対象となる作物のかん水量とかん水間隔について、精度の高いデータが必要となる。降雨量データも対象地点により近い場所のデータを用いることで精度を上げることができる。
- 貯水槽、ならびに雨樋から貯水槽への送水管は、ビニルの張り替え等の農作業の支障にならない場所に設置する。
具体的データ
(熊本県)
その他
- 研究課題名: 沿岸地域の施設園芸灌漑用水確保技術の開発
- 予算区分: 県単
- 研究期間: 2008~2010年度
- 研究担当者: 牧平 朋大、乗田 貞博、石氷 泰夫