九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

未成熟果実へのエスレル処理および胚培養を利用したパパイア実生の早期育成

要約

パパイアの受粉~種子発芽までの6~9ヶ月の期間を、受粉後60日~75日の未熟な果実にエスレル溶液(100mg・l-1濃度)を10~20日間処理後、無菌的に果実内の種子から胚を摘出し、15日間の胚培養を行うことによって、3~4ヶ月に短縮できる。

  • キーワード: 未成熟果実、パパイア、エスレル、胚培養
  • 担当: 沖縄農研セ・野菜花き班
  • 代表連絡先: Tel:098-840-8506
  • 区分: 九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類: 研究・参考

背景・ねらい

沖縄県では、古くからパパイアの果実を野菜として利用しており、生産量も増加している。しかしながら、本県独自の品種は無く、育種もあまり進んでいない。パパイアの純系品種育成には約15年(7~8世代)の期間を要する。そのため、育種年限の短縮は重要な課題である。特に、生育過程の中では、受粉から果実成熟までの期間が5~8ヶ月間と長く、更に採種後の種子発芽までに約1ヶ月を要する。そこで、本試験では品種育成の効率化を図るため、受粉~種子発芽までの期間短縮および発芽実生の初期生育促進技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 受粉後75日目の未成熟果実への10日および20日間のエスレル処理(100mg・l-1濃度)により、果実内空洞部でエチレン生成量が高まり(データ略)、種皮の着色が促進され、薄茶および茶色種子が増加する(図1)。
  • 種子重は、受粉後45日および60日目の果実への10日および20日間のエスレル処理によって減少し、エチレンによる離層形成の影響が示唆された(データ略)。
  • 胚発芽率は、受粉後45日目の果実への20日間のエスレル処理によって有意に高くなったが、受粉後60日および75日目の果実への処理では差が認められない(表1)。また、対照区では、受粉後140日目に胚が発芽せず胚休眠が認められた(データ略)。
  • 胚培養15日後の実生の生育は、エスレル処理区で有意に促進され、胚軸長および根長が長く伸長する(表1、図2)。しかしながら、受粉後45日目の20日間処理では生育が劣るため、実生育成を目的としたエスレルの処理時期は、生育特性を考慮すると受粉後60日および75日目が適している。

成果の活用面・留意点

  • パパイアの品種育成における実生獲得の早期化および世代促進技術として活用する。
  • エスレル処理方法は、まず、樹上の果実を100mg・l-1濃度のエスレル溶液50mlを注入したビニル袋で覆い、ビニルテープで密封する。次に、果実の温度上昇を防ぐため果実全体をアルミホイルで覆い遮光する。
  • 胚培養の発芽培地組成は、CPPU(0.0025mg/L)、ショ糖(30g/L)、寒天(8g/L)を添加し、pH5.8に調整したMS培地を用いる。
  • エスレル処理により、実生の生育促進効果は認められたが、順化後の生育差については今後の検討課題である。

具体的データ

図1

表1

図2

(沖縄県農業研究センター)

その他

  • 研究課題名: パパイアの育種年限短縮技術の開発
  • 予算区分: 県単
  • 研究期間: 2007~2009年度
  • 研究担当者: 玉城 盛俊、宮城 徳道、新里 仁克、與那嶺 かおる