九州沖縄農業研究センター

九州沖縄農業試験研究の成果情報

イチゴ多収穫のためのひな壇2段高設栽培システム

要約

作業性、収量性の優れる固定式多段高設栽培システムは、ひな壇2段でシート式栽培槽を上段に1槽、下段に2槽を配置する。本システムでは慣行高設栽培の1.7倍(12,833株/10a)密植でき、5割増収する。初期投資額は慣行の1.4倍となる。

  • キーワード:イチゴ、ひな壇2段高設栽培、密植、増収、初期投資額
  • 担当:福岡農総試・野菜栽培部・イチゴ栽培チーム、野菜栽培チーム、豊前分場・野菜水田作チーム、筑後分場・野菜チーム、土壌・環境部・施肥高度化チーム、食品流通部・経営マーケティングチーム
  • 代表連絡先: Tel:092-922-4364
  • 区分:九州沖縄農業・野菜・花き
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

福岡県内で普及している高設栽培は土耕栽培に比べて作業性は優れるが収量性が劣ることが課題になっている。そこで、「あまおう」の株の立性、果実の着色が良いなどの特徴を積極的に活かし、作業性や受光体勢に優れる立体式高設栽培を選定する。さらに、受光量向上や低コスト化のため栽培槽を改良し、密植、多段に向く多収栽培技術を確立する。

成果の内容・特徴

  • 固定式多段高設栽培において作業性に優れ、各架台における積算日射量が多く多収、品質の安定する架台の構造は3栽培槽を持つひな壇2段である(図1、図2)。
  • ひな壇2段高設栽培では上段の高さが110cm、下段(2槽)との高低差が30cm、通路側への距離が38cmの場合に各栽培槽への積算日射量が多く、作業性も良好である(図2、表1、一部データ略)。
  • 栽培槽にはプラスチック製樹脂製に比べて安価で収量も同等であるシート(ポリエチレン製割布:幅50cm、底面に給水シート:幅25cm)を用いる。架台サイドに被覆資材(白黒マルチ)を被覆すると無被覆に比べ115%受光量が増える(図2、一部データ略)。
  • 株間は15cmとし、上段は2条植え、下段は1条植えとすると定植株数が慣行1段の1.7倍(12,833株)の密植となり、商品果収量は慣行の1.5倍で6.6t/10aとなる(表2)。
  • 「あまおう」では、窒素成分75ppmの総合液肥をかん水同時施肥すると果房の連続性と収量が優れる(データ略)。
  • 改良システムで生産された「あまおう」果実の糖度、酸度は慣行高設栽培と変わらない(データ略)。
  • 本システムにおける架台、培土及びその他の資材費、工事費の合計は584万円で慣行の約1.4倍となる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 高設栽培の多収システムとして活用する。
  • ひな壇高設栽培システムの仕様書および栽培マニュアルを作成して普及を図る。
  • 葉が立性の品種に活用できる。
  • 雇用を導入した規模拡大の方策の一つとして活用する。
  • 通路幅は90cmに設定した。

具体的データ

 図1

図2

表1

表2

その他

  • 研究課題名:多収を目指した高設栽培システムの開発及び生産技術の確立
  • 予算区分:県単
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:北島伸之、井上恵子、佐藤公洋、田中良幸、水上宏二、龍勝利、満田幸恵、手嶋洋司、奥幸一郎