食品研究部門

生物資源変換ユニット

役割

「バイオエコノミー」という語が国内外で使われはじめています。様々な情報を総合すると、この語は、「生物圏への負荷を減らすため、再生可能な生物資源の生産、廃棄のためのフローを活用して、食料、飼料、バイオベース製品、バイオエネルギーなどの付加価値をもつ製品に変換する取組」を示します。この取組は、国際連合が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)達成のための手段として位置づけられ、我が国がめざすSociety 5.0の実現にも通じるものです。
その一方で、この中でいう、「生物資源のフロー」を管理・制御できるのは、農林水産業、食品産業等だけです。つまり、バイオエコノミーとは、「地球環境のために農林水産業・食品産業等の役割を発展拡大せよ」というメッセージに他ならないことに気づきます。
我が国の地域農林水産業・食品産業等が創り出す生物資源のフローは、規模が小さいことが特徴です。このため、よりフロー規模が大きい海外で技術開発が進むと、共通基盤技術の完成が加速する反面、国内地域がもつ資源循環の潜在力を活かすチャンスが脅かされることになります。そこで、海外での先端技術の発展を見据えつつ、小規模なフローに適合する「日本型バイオエコノミー」の実現に向けた独自の技術を開発する必要があります。この中では、プロセスの簡素化に加えて、多数有価物の同時製造、そして個性化が鍵となるものと考えられます。
当ユニットでは、国内地域資源を高度利用するため、その潜在的価値を発掘し、変換時のボトルネックを取り除くための革新技術を開発しています。最大のターゲットは、子実収穫時・製造時の残渣などとして得られる繊維質資源であり、バイオの力を活用して繊維質資源のもつ個性を活かした有価物を製造するため、地域バイオプロセスの構築に向けた研究開発を進めます。より具体的には、変換時のユニバーサルなボトルネックである草本系湿潤原料の貯蔵・前処理工程、糖化変換酵素の効率的生産工程などにおける革新要素技術の開発とそのバイオプロセス化研究を基軸としつつ、食品産業現場等で生産される多糖資源の高付加価値化、ユニークな発酵変換工程の開発等にも併せて取り組みます。

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主な研究テーマ

農林水産資源の高付加価値化及び6次産業化に資する有効利用技術の開発

農林水産資源をより有用な物質に変換して高付加価値化を実現するとともに、得られた物質に基づく6 次産業化に貢献するため、微生物や酵素の機能等を活用した効率的な変換システムを開発。

「地域バイオプロセスWG」の活動について(2017年~ 2019年論点整理予定)

本WGの対象となる「地域バイオプロセス」とは、農林水産業、食品産業等の現場で生産される生物由来の資源からの「ものづくり」のうち、生物変換技術を適用するプロセスとします。本WGでは、未利用資源の代表である繊維性バイオマスに対象を限定せず、すでに低付加価値の用途が存在する資源も対象として、新たな高付加価値製品に変換するためのバイオプロセスを構築し新生物産業を創出するための技術開発戦略を考えていきます。本WG活動は、200名以上の産学官の方々にご登録・ご支援いただき、2018年度までに、下記PDFファイルに記載された情報提供を通じて、技術開発戦略のあるべき姿を考えてきました。2019年度には、これらの情報を踏まえて、地域バイオプロセス構築までの道筋等について整理を試みます。
2019年度もWGでの情報提供・討議のためのMLへの登録を広く募集します(無料、詳しくは下記ご案内パンフレットをご確認の上、ML登録用アドレス:bioprocess(@)ml.affrc.go.jpへご連絡ください)。※メール送信の際には、@の両端の()は除いてください。


20170216付「地域バイオプロセスWG」ご案内パンフレット

20170222付「地域バイオプロセスWG」趣旨と論点候補

【情報1】39thSBFC概要(20170310)[PDF:255KB]

【情報2】日本ワイン(20170311)[PDF:291KB]

【情報3】GM植物開放系栽培(20170314)[PDF:275KB]

【情報4】三重リファイナリ取組(20170404)[PDF:290KB]

【情報5】リグニン(20170515)[PDF:371KB]

【情報6】食料・農業・農村白書等(20170617)[PDF:361KB]

【情報7】ものづくり白書(20170617)[PDF:298KB]

【情報8】廃食用油再生利用と「UCオイル」(20171005真野潤一)[PDF:258KB]

【情報9】地域での脂質製造と高付加価値化(20171010)[PDF:354KB]

【情報10】地域生物資源からの突破力(20171130)[PDF:369KB]

【情報11】地域バイオプロセス(20180312)[PDF:380KB]

【情報12】40thSBFC概要(20180510)[PDF:281KB]

【情報13】地域多糖(20180926)[PDF:363KB]

【情報14】垂直型食品製造技術(20190619)[PDF:305KB]

メンバー

(写真)徳安 健 (写真)山岸 賢治 (写真)池 正和

ユニット長(左)

徳安 健(とくやす けん)、博士(農学)/専門:糖質科学、酵素工学

上級研究員(中央)

山岸 賢治(やまぎし けんじ)、博士(農学)/専門:バイオマス変換工学、糸状菌分子生物学、遺伝子工学

主任研究員(右)

池 正和(いけ まさかず)、博士(工学)/専門:酵素工学、微生物学、培養工学

主要成果

こちらをご覧ください。