農業環境変動研究センター

昆虫分類評価ユニット

病理昆虫標本館に保管されているタイプ標本の一部

新しい作物の導入、作物の栽培方法・時期の変更、気候変動などによって新たな有害生物が発生することがあります。近年の物資や人の世界的な移動の増加や気候変動のため、海外から未知の害虫などがわが国に侵入してくる危険性も増しています。実際、侵入してきた害虫などが未記載種であったり、日本未記録種であったりすることも少なくありません。その中でも、昆虫・線虫はとくに種数が多く、形態的に類似した種も多いことから同定・分類が難しい状況です。

当ユニットは、農事試験場時代以降100年以上の長きにわたり昆虫類の分類研究に取り組んでおり、多数の標本を収集し、また多くの新種を記載してきています。主に当ユニットで管理している病理昆虫標本館には、現在約135万点の昆虫類の標本が保管されており、新種記載に際して指定されるタイプ標本約1、000点(図)や同定依頼対応やジーンバンク事業で研究証拠標本として保管している標本など、貴重な標本も多数所蔵しています。これら標本とその情報は、同定依頼があった場合などに比較資料として活用するほか、同定を終えたコレクションの標本目録などを作成・公開したり、データベース化と公開を進めたりして、世界に誇れる研究資産としての利活用の促進を図っています。また、近年では、害虫を中心にDNA情報の集積も開始しています。DNA情報は、近似種の識別や系統関係の推定に活用できるほか、ステージ間の種の異同の判別に役立てることもできます。例えばチョウ目昆虫では、主に幼虫が作物を加害するため害虫とされるので幼虫での同定が重要ですが、いまだ幼虫での識別法は十分確立されていません。DNA情報を活用しつつ、卵・幼虫・蛹・成虫の各ステージにおける形態学的研究を深化させているところです。採集日、採集場所など標本ラベル情報の抽出・デジタル化を行い、標本情報のデータベース化も加速させ、害虫種については、標本データから分布マップが表示できるようなシステムを構築したり、作物別の害虫識別マニュアルを作成したりしたいと考えています。


メンバー