動物衛生研究部門

家畜における生化学病性鑑定のための臨床生化学的検査マニュアル

VII. 2. HPLCによる肝臓中脂溶性ビタミンの測定

測定原理

ビタミン(ビタミンA:レチノール、ビタミンE:αトコフェロール)自体が蛍光を発する性質(レチノール:励起325nm、蛍光465nm、α-トコフェロール:励起295nm、蛍光330nm)を利用し、蛍光を検出することにより肝臓中のビタミンの量を測定する。

目次

1.準備物

(1) 器具・機械

  • HPLC
  • 遠心機
  • 吸光光度計
  • 共栓付褐色試験管
  • ボルテックスミキサー
  • シェイカー
  • ヒートブロック
  • ホモジナイザー

(2)試薬

  • エタノール
  • n-ヘキサン
  • イソプロパノール
  • クロロホルム
  • N2ガス

(3)標準液

  • レチノール
  • パルミチン酸レチノール
  • β-カロテン
  • α-トコフェロール

2.試薬調整法

レチノール標準液

  • レチノール約1mg/ml in エタノールをエタノールで1000倍希釈して約1μg/mlにし、吸光光度計で分子吸光係数を測定する(測定波長325nm)。分子吸光係数から正確な濃度を求めた標準液は、褐色試験管に入れ、空気をN2ガスに置換した上密栓し、-20°Cで保存する。
    標準液の濃度は以下の計算式で算出する。

all-trans retinolの吸光係数

  • レチノール標準液の濃度(μg/ml)=(レチノール標準液の濃度/1835)×10,000

α-トコフェロール標準液

  • α-トコフェロールをエタノールで希釈し、標準液として用いる。

β-カロテン標準液

  • β-カロテンを0.1%ブチルヒドロキシトルエン(BHT)含有クロロホルムに溶解し、1mg/mlにする。
    必要に応じてイソプロパノールで希釈し、標準液として用いる。
    イソプロパノールで希釈するとβ-カロテンが析出することがあるので注意する。

パルミチン酸レチノール

  • パルミチン酸をエタノールで希釈して標準液として用いる。
    パルミチン酸レチノール標準液の濃度(μg/ml)=(パルミチン酸レチノール標準液の濃度/975)×10,000

3.操作手順

(1)サンプル処理

  • 肝臓を1gホモジナイザーにはかりとる。
    肝臓の量は正確でなくても良いが、量を必ず記録する。
  • D.Wを4ml加える。
  • 氷で冷やしながらホモジネートする。
  • ホモジネートした肝臓を0.5ml褐色試験管にとる。
  • D.Wを0.5ml加える。
  • エタノールを1ml加える。
  • ヘキサンを5ml加える。
  • 5分間激しく混和する。
  • 1000rpm 5分間遠心する。
  • ヘキサン層4mlを別の褐色試験管に移す。
  • ロータリーエバポレーター、またはN2気流中で40°Cに加温しながら溶媒を除去する。
  • イソプロパノール200μlを加え、再溶解する。
    温めると溶媒が蒸発して濃度が変わるので氷上に置く。
  • 20μlをカラムに注入する。
(1) 肝臓を1gはかりとる。 (2) D.Wを4ml加える。
肝臓を D.Wを
(3) 氷上でホモジネートする。 (4) ホモジネートしたサンプル。
氷上で ホモジネート
(5) サンプル0.5mlにD.W0.5mlとエタノール1mlを加え、ボルテックスミキサーにかける。 (6) 混和したサンプルにヘキサン5mlを加え、5分間激しく振とうする。
サンプル0.5ml 混和したサンプル
(7) 1000rpm5分間遠心し,ヘキサン層を別の試験管に移す。 (8) N2気流中で溶媒を蒸発させる。
1000rpm5分 N2気流中

(2) HPLCの条件

レチノール、パルミチン酸レチノール、α-トコフェロール
  • カラム:ODS(C18)系カラム
    移動相:メタノール
    流量:2ml/min
    検出器:レチノール・パルミチン酸レチノール 蛍光(EX325nm, Em465nm)、 紫外吸収(325nm)α-トコフェロール 蛍光(EX296nm, Em330nm)、紫外吸収(292nm)
    移動相にメタノールを用い、検出器にPDAを併用するとレチノール、α-トコフェロール、β-カロテンを同時に定量できる。
レチノール・パルミチン酸レチノール
  • カラム:ODS(C18)系カラム
    移動相:エタノール:水=95:5
    流量:1ml/min
    検出器:レチノール・パルミチン酸レチノール 蛍光(EX325nm, Em465nm)、紫外吸収(325nm)
  • ODS(C18)系カラム
    移動相:エタノール:水=98:2
    流量:1ml/min
    検出器:レチノール、パルミチン酸レチノール 蛍光(EX325nm, Em465nm)、紫外吸収(325nm)

(3) 濃度計算方法

Astd=標準溶液を20μl注入した場合の面積
Asam=サンプル溶液を20μl注入した場合の面積
肝臓中のビタミン量(μg/ml)= Astd/Asam×(標準溶液の濃度×20/1000)×(1.0/(血清使用量))×(5/4)×(再溶解量/20)

4.補足説明

HPLCの条件によりリテンションタイム等が異なる。

(1)条件
カラム:ODS(C18)系カラム
移動相:メタノール100%
流量:2ml/min

レチノール・パルミチン酸レチノール・β-カロテンのクロマトグラフ

蛍光(Ex325nm・Em465nm) 蛍光
PDA:
レチノール 325nm
パルミチン酸レチノール 325nm
β-カロテン 450nm
PDA

βカロテンは蛍光を発しないため、蛍光検出器では測定できない。

α-トコフェロールのクロマトグラフ
矢印:α-トコフェロール

蛍光(Ex296nm・Em330nm) 蛍光
PDA:α-トコフェロール 292nm PDA

PDAの場合、α-トコフェロールは蛍光に比べて、ピークが小さく、濃度の測定には向いていない。

牛血清

蛍光(Ex325nm・Em465nm) 蛍光
蛍光(Ex296nm・Em330nm) 蛍光
PDA:
レチノール 325nm
パルミチン酸レチノール 325nm
β-カロテン 450nm
PDA

条件
カラム:ODS(C18)系カラム
移動相:エタノール:水=95:5
流量:1ml/min

レチノール・パルミチン酸レチノール・β-カロテンのクロマトグラフ

蛍光(Ex325nm・Em465nm) 蛍光
PDA:
レチノール 325nm
パルミチン酸レチノール 325nm
β-カロテン 450nm
PDA

牛肝臓

蛍光(Ex325nm・Em465nm) 蛍光
PDA:
レチノール 325nm
パルミチン酸レチノール 325nm
β-カロテン 450nm
PDA

条件
カラム:ODS(C18)系カラム
移動相:エタノール:水=98:2
流量:1ml/min

蛍光(Ex325nm・Em465nm) 蛍光
PDA:
レチノール 325nm
パルミチン酸レチノール 325nm
β-カロテン 450nm
PDA

牛肝臓

蛍光(Ex325nm・Em465nm) 蛍光
PDA:
レチノール 325nm
パルミチン酸レチノール 325nm
β-カロテン 450nm
PDA

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