動物衛生研究部門

家畜における生化学病性鑑定のための臨床生化学的検査マニュアル

IX-1.血清銅の比色定量法

測定原理

血清に塩酸を加え加熱すると、セルロプラスミンなどの金属結合蛋白質から金属が解離する。

その後トリクロロ酢酸を加え、蛋白を沈殿させる。遠心分離後、上清にアスコルビン酸を加え、Cu++を還元する。その後バソクプロイン酸を加え呈色し485 nmの吸光度を測定する

参考文献

  • 医化学実験法講座, 臨床化学II, 1973, 中山書店

目次

1.準備物

(1)機械

分光光度計

(2)試薬

  • 銅標準液(1000 mg/L)
  • 塩酸(精密分析用)
  • トリクロロ酢酸(特級)
  • L(+)-アスコルビン酸
  • 酢酸ナトリウム三水和物
  • バソクプロインジスルホン酸二ナトリウム(ドータイト、和光純薬)

(3)器具

  • ボルテックスミキサー
  • 小試験管

2.試薬調整法

(1)標準液

銅高濃度標準液
メスフラスコに銅標準液を1.0 ml取り、蒸留水で全量を100 mlにする(表-1)

(表-1)

市販品標準液蒸留水濃度
銅標準液
(1000 mg/L)
1.0 ml 全量を100 mlにする 銅の濃度は1000 μg/dl

銅測定用標準液
高濃度標準液を所定量取り、蒸留水で全量を10.0 mlにする(表-2)

(表-2)

標準液高濃度標準液
(ml)
蒸留水
(ml)
全量
(ml)

最終濃度
(μg/dl)

Blank 0.0 10.0 10.0 0
Std 1 0.25 9.75 10.0 25
Std 2 0.50 9.50 10.0 50
Std 3 0.75 9.25 10.0 75
Std 4 1.00 9.00 10.0 100
Std 5 1.50 8.50 10.0 150
Std 6 2.00 8.00 10.0 200

(2)試薬

  • 1N 塩酸
    濃塩酸を蒸留水で12倍する
    酸塩基試薬の調整法
  • 20%トリクロロ酢酸溶液
    20 gのトリクロロ酢酸を蒸留水で溶解し、全量を100 mlにする
  • アスコルビン酸溶液
    アスコルビン酸 0.2 g、 1 N 塩酸 1 ml を取り、蒸留水で溶解し 100 ml とする。
  • 2 mol 酢酸ナトリウム溶液
    酢酸ナトリウム三水和物を 27.2 g 秤量し、蒸留水で溶解し 100 ml とする。
  • 発色試薬
    バソクプロインジスルホン酸二ナトリウムを 20 mg 秤量し、
    2 mol の酢酸ナトリウム溶液で溶解し 100 ml とする。

バソクプロインジスルホン酸ナトリウム20 mg を蒸発皿に入れる
写真

2 mol の酢酸ナトリウム溶液を加えながらガラス棒で攪拌し溶解する(解けにくい)
写真

2 mol の酢酸ナトリウム 100 ml で溶解する(完全に溶解しないため液は不透明)
写真

ろ過し、不溶物を取り除き使用する
写真

3.操作手順

(1)サンプル処理

  • 清浄な小試験管に血清 1.0 mlを静かに入れる
  • 1.0 N 塩酸を0.5 ml静かに加える
    直ちにボルテックスミキサーで混和
  • 80~95°Cの温浴(沸騰後火を止めた状態)で2分間加温
  • 放冷
    室温放置
  • 20%トリクロロ酢酸を 0.5 ml加える
    直ちにボルテックスミキサーで混和
    混和しすぎない
  • 30分間室温放置
  • 3,000 回転、10分間遠心する
    蛋白が浮遊しているときは軽く振り再度遠心する(3,000回転、5分間)
    上清に蛋白浮遊物があると測定時に吸引チューブを詰まらせる
  • 上清を別の試験管に移す
  • 上清 1.0 ml を別の試験管に取り分ける
  • アスコルビン酸溶液をパスツールピペットで2滴(約 60μl)加えボルテックスミキサーで混和
  • 発色試薬 0.5 ml 加えボルテックスミキサーで混和
    混和後直ちに発色する
  • 485 nm の吸収波長で吸光度を測定する

(2)標準液(濃度 0~200 μg/dl)も血清同様に処理する

標準液は標準曲線の再作成や補正をするので多めに作成する

写真左側から
1. 血清
2. 血清に 1.0 N 塩酸を 0.5 ml加え混和した試料
3. 20%トリクロロ酢酸を 0.5 ml加え混和した試料
4. 3,000 回転、15 分間遠心分離した試料
5. 上清液

写真上清液の移し方
20%トリクロロ酢酸を 0.5 ml加えた後、
3,000回転、15分間遠心した試料の
上清を別な試験管に移す

写真別の試験管に上清液を 1.0 ml 取り分け、
アスコルビン酸を2滴加えた後、発色試薬を
0.5 ml 加える

写真溶液をキュベットに入れ485nmの吸収波長を測定

作成スタンダード曲線
グラフ

4.補足説明

(1)標準液の吸光度からスタンダード曲線を作成し、サンプルの定量を行う。

定量演算機能が付いている機種であれば自動的に測定値を打ち出してくる

(2)原子吸光法と比色法の相関

グラフ

(3)正常値(当研究所調べ)

ホルスタイン育成牛

  • Cu 70~105 μg/dl
  • Zn 115~160 μg/dl
  • Fe 130~190 μg/dl

研究センター