動物衛生研究部門

家畜における生化学病性鑑定のための臨床生化学的検査マニュアル

IX-2.臓器および飼料中モリブデン(Mo)の比色定量法

測定原理

飼料中の金属を測定するためには試料に強酸を加え加熱灰化する。再溶解した灰化液に酢酸n-ブチルを加え抽出する。その後、蒸留水を加え水層に移行する。水層溶液に発色試薬を加え、インキュベー後、 390 nm の吸光度を測定する。

参考文献

  • Christian, G.D. & Patriarche, G.J.: Catalytic determination of molybdenum in the blood. Analy. Lett., 12, 11~24, 1979.
  • 臨床検査: vol.34 no.11 1990年 増刊号 1426~1428

目次

1.準備物

(1)器具

  • 分光光度計
  • 分液ロート(100 ml 容)
  • 恒温槽(15 °Cを維持できるもの)
  • 恒温水槽
  • ビーカー、試験管など
  • ガラス器具は酸洗浄済みのもの
    -酸洗浄-
    通常の洗浄は、乾燥後、1%硝酸に一晩浸け、蒸留水ですすいだ後、さらに乾燥させる。

分光光度計
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分液ロートおよび分液ロート台
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恒温槽(ドライタイプ)
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恒温水槽
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(2)試薬

  • 塩酸 (精密分析用)
  • セレン酸ナトリウム(試薬一級)
  • 酢酸 n-ブチル(原子吸光分析用)
  • アラビアゴム
  • 塩化第一スズ二水和物(有害金属測定用)
  • 過マンガン酸カリウム(有害金属測定用)
  • 硫酸第一鉄アンモニウム六水和物(試薬特級)
  • モリブデン標準液(原子吸光分析用)

2.試薬調製法

(1)標準液

モリブデン標準液
メスフラスコにモリブデン標準液 0.1 ml 入れ、0.1N 硝酸を加え全量を100 mlにする(表-1)

(表-1)

市販品 標準液 0.1N 硝酸 モリブデン濃度
モリブデン標準液
(1000 mg/L)
0.1 ml 全量を100 mlにする 100 μg/dl (1.0 μg/ml)

灰化用標準液
モリブデン標準液を所定量取り、ケルダールフラスコに入れる。(表-2)

(表-2)

標準液 モリブデン標準液(1.0 μg/ml)
(ml)
モリブデン量
(μg)
Blank 0.00 0.00
Std 1 0.25 0.25
Std 2 0.50 0.50
Std 3 1.00 1.00
Std 4 1.50 1.50

上記モリブデンを入れたケルダールフラスコを試料同様に灰化操作を行う、その後蒸発皿で蒸発乾固し、10 ml の6 N 塩酸溶液で再溶解し比色測定用スタンダード溶液とする。

(2)試薬

  • 6 N 塩酸溶液
    濃塩酸を蒸留水で2倍する。
    酸塩基試薬調製
  • 0.45 M セレン酸ナトリウム溶液
     セレン酸ナトリウム 8.5023gを蒸留水で溶解し、全量を 100 ml にする。
  • 0.1 M 硫酸第一鉄アンモ二ウム溶液
    硫酸第一鉄アンモ二ウム六水和物 0.392 g を蒸留水 10 ml で溶解する。
  • 0.1 M 過マンガン酸カリウム溶液
    過マンガン酸カリウム 0.158 g を蒸留水 10 ml で溶解する。

*0.45 Mセレン酸ナトリウム混合溶液の調整法
0.45 M セレン酸ナトリウム溶液 100 ml に、0.1 M 過マンガン酸カリウム溶液 5 ml を加え、
沸騰水浴中で 10 分加熱する。冷却後、0.1 M 硫酸第一鉄アンモ二ウム溶液 1.0 ml を加え
さらに 10 分間加熱。冷却後、ガラスフィルターなどで濾過する。

  • 0.25%アラビアゴム溶液
    アラビアゴム 0.125 g を蒸留水 50 ml で溶解する。
  • 0.4 M 塩化第一スズ溶液(用時調整)
    塩化第一スズ二水和物 0.4513 g を 6 N 塩酸溶液で溶解する。

3.操作手順

  • (1)スタンダード、試料の前処理法(灰化)は原子吸光法による臓器中 銅、亜鉛の測定および原子吸光法による飼料中 銅、亜鉛の測定のページを参照すること
  • (2)スタンダード(モリブデン量: 0 , 0.25 , 0.50 , 1.0 ,1.5 μg)および試料の灰化再溶解液(全量 10 ml)
    5.0 ml を 100 ml 容の分液ロートに入れる。
  • (3)次いで 10 ml の酢酸n-ブチルを加えて数分間混和する。
  • (4)有機層を別の分液ロートに移し、10 ml の蒸留水を加え混和する。
  • (5)水層を試験管に入れる。
  • (6)水層 2.0 ml を試験管に採り、6 N 塩酸 0.8 ml 、0.45 Mセレン酸ナトリウム混合溶液 0.4 ml、)
    アラビアゴム溶液 0.1 ml 、蒸留水 0.9 ml を加え混合する。
  • (7) (6)の混合液 0.84 ml を容量 1.5 ml のサンプリングチューブ(ポリプロピレン製)に入れ、
    恒温槽で 15 °C に平衡化する。
  • (8) 0.4 M 塩化第一スズ溶液も同様に恒温槽で 15 °Cに平衡化する。
  • (9) 平衡化した(7)のチューブに(8)の塩化第一スズ溶液を加え、30 °Cで15分間インキュベートする
  • (10) 正確に15分後、390 nm の吸光度を測定する。

(1)試料の灰化再溶解液
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(2)再溶解液 5 ml を分液ロートに入れる
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(3)酢酸 n-ブチルを 10 ml 加える(上層が有機層)
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(4)-1 下層液を取り除く
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(4)-2 上層の有機層を新しい分液ロートに入れる
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(4)-3 蒸留水 10 ml を加え混合(蒸留水を加えた直後)
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(4)-4 数分間混合すると白濁はなくなり、2層に分離する
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(5)-1 水層を試験管に入れる
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(5)-2 水層 10 ml を回収
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(6) 水層を 2 ml 試験管に入れる
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0.45 Mセレン酸ナトリウムを加えると色が付く
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しばらく経つと色は消失する
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(7) の混合液をチューブに入れる
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混合液と塩化第一スズ溶液を 恒温槽で 15 °Cに平衡化する
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(9) 恒温水槽でインキュベートする
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(10) 390 nm の吸光度を測定(ブランク)
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(10) 390 nm の吸光度を測定(1.0 μg)
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(11)測定したモリブデン標準曲線
グラフ

4.補足説明

(1)検量線

標準溶液から検量線を作成する
定量演算機能が付いていれば機械が作成する、サンプルを測定すると自動的に濃度が計算されプリントアウトされる

(2)計算

検量線から得られたデータを下記の式に当てはめれば臓器および飼料中のモリブデン量が求められる

a÷b = μg/g
a :検量線から得られたデータ(μg)
b :試料量(重量 g)

(3)正常値(当研究所調べ)

イネ科牧草

  • モリブデン 0.5~1.0 μg

(4)参考資料

  • 日本標準飼料成分表(2001年版), 中央畜産会

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